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帰還

 海賊を殲滅してから数時間後。僕達はノーエンコーブの港へと無事に到着していた。

 下船するのは、最初はメアリー様ご一行。


「ウィルさん、この度は本当にありがとうございました。今回の件をお父様に報告して、必ずお礼をさせていただきますので」


「お気持ちだけで結構です、メアリー様。僕はただ単に船乗りの掟に従い救助をしただけ。船乗りとして当然のことをしたまでです」


「それでも、です。貴族、それも比較的上位にいる者が娘の命を助けてもらったのに謝礼の1つも無いと、色々と言われてしまうのです。少なくとも、お屋敷の方に必ず招待させていただきますから」


 そう言い残し、メアリー様はメイドさん達や騎士達を連れ、迎えの馬車に乗り屋敷へ帰って行った。

 正直、貴族様のような上流階級の人と話すとなると緊張するから、なるべく避けたいところではあるけど……ちょっと腹をくくらなきゃいけないかもしれない。


 次に下船したのは、襲われた船の船長さん達だ。


「ウィル船長、今回は本当に助かった」


「いえ、お気になさらず。それより、船の方はどうでした?」


「浮かぶだけなら問題は無いし、舵も舵輪が壊されただけだからまた取り付け直せば舵は取れる。けど、マストが破壊されてしまったからなぁ。修理できないこともないが、時間は掛かるかもしれん」


 時間が掛かるのか。

 修理費に、修理中は仕事が出来ないことを考えると結構財政的に大変そうだ。


「財政面は心配してないんだ。こういうときのための保証も海運ギルドで制定してあるから。それに、面白い船に乗れたことで船乗りとして刺激を受けたしね。海賊に襲われる災難に遭ったけど、それを取り返せるくらい貴重な体験が出来たしね」


 それじゃ、世話になったと船長達はヘーゲル号を降りた。おそらく、これから海運ギルドへ行って今回の件について報告するのだろう。

 そして僕も似たような報告をしなければならない。


 ちなみに、海賊に遭遇し討伐を行った場合、その海賊の戦力や規模に応じて特別報酬が支払われる事になっている。

 今回は海賊化したレリジオ教国遠征隊の生き残りであり、厄介な魔法使いが一人存在したことを加味して……20万リブラ程度ってところか?


 そしてもう一つ、マリーからボーナスについて告げられた。


『キャプテン。海賊を討伐した事に対してポイントが付与されました。今回の規模の海賊ですと、3000ポイントです』


「わかった、ありがとう」


 これで手持ちのポイントは4300ポイント。

 残念ながら次に狙っている施設を増設するためには、残りおよそ2000ポイントは必要だ。

 だから、今回のヘーゲル号の強化は見送りだな。


「よし、海運ギルドに行くか」


 そして僕が最後にヘーゲル号を下船し、海運ギルドへ依頼完了と海賊についての報告を行いに行くのだった。



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