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最後の戦い

 一旦離れてみたが、サンクタス・アバーテは追ってくる気配がなかった。

 敵にしてみれば逃げ切るのが勝利条件なのだから、無理に追撃する必要が無いという訳か。


「それで、何か策があるのか?」


「ある。まさかこんな事に使うとは思わなかったけど。マリー、滞空装置を起動しろ」


『了解、キャプテン。滞空装置、起動します』


 すると、へーゲル号の帆が風船のように膨らみ始めた。それと同時に船体が浮き始める。


「お兄様、船が浮いています!」


「あはは~。本当に面白いね~、この船は~!」


「……空を飛ぶなんて、考えもしなかった」


 クルーから感想が色々と出ているが、これが20万ポイントかけて導入した装置『滞空装置』だ。

 その名の通り、帆を風船と化して船を空中に浮かせるシステムだ。

 なお、空中の移動は船尾のプロペラを使って行う。


「よし、このままサンクタス・アバーテの上空まで行くぞ」


 空中から近づこうとするが、もちろん敵は近づけまいと攻撃を行う。

 しかし、へーゲル号は攻撃が届かないほどの高度で飛行しているので、攻撃が届くことは全くなかった。


『サンクタス・アバーテ上空に到達しました』


「よし、急降下だ。総員、何かに掴まれ! 衝撃に備えろ!!」


「ウィル、お前まさか……」


 エリオットが何か気付いたらしいが、もう遅い。

 へーゲル号はそのまま急降下し、サンクタス・アバーテの結界に接触。そしてへーゲル号の魔力吸収機能で結界に穴が空き、そこから落下。

 結果、へーゲル号はサンクタス・アバーテの甲板(見た目は要塞内部だが)に不時着した。




「それじゃあエリオット、後は頼んだ」


「全く、たまにお前は無茶なことを考えるよな。だが、決着を付ける良い機会だ。必ず成功させろよ」


 僕、ジェーン姉様、キャンプスさんの3人でこれから白兵戦を行い、教皇の下へ強襲をかけるのだ。

 エリオットを船長代理に指名し、へーゲル号の指揮と防衛を任せている。メアリーは後衛タイプの能力なので、へーゲル号で待機だ。


「お兄様、お姉様、キャンプスさん、どうかお気を付けて」


「ま~、ちゃちゃっと終わらせてくるよ~」


「……そっちも、油断しないように」


「じゃ、攻撃開始だ!」


 そして僕達はへーゲル号を飛び出し、強襲を開始した。


 へーゲル号を降りたところは、別に大したことは無かった。

 へーゲル号が着陸したときの余波とその後の射撃・砲撃によってほぼ全滅していたからだ。


 問題は、城塞の建物内部に突入した後だった。

 敵の方が内部構造に詳しいこともあり、死角などから突然攻撃を仕掛けられることがしょっちゅうあったのだ。

 かなり必死すぎて詳細はほとんど思い出せないが、何度も奇襲を受けている内に負傷してしまった。それは突撃メンバーの3人全員がだ。

 特にジェーン姉様が負傷したのは衝撃が大きかった。あの姉様がケガをする光景は今まで想像できなかったくらい強かったからだ。

 3人の中では一番ダメージが少ないが、それでも姉様がダメージを受けてしまうくらい激戦だったのは確かだ。


 それでもなんとか前に進めたのは、砲撃支援のおかげだ。

 普通に戦闘を行うのでは目標への到達は不可能だと悟った僕は、バッジ状態になっているスタチューからエリオットに連絡。城塞の外壁を壊す程度に砲撃を行ってもらう事にした。

 その結果、敵の間で下手に動くと砲撃の餌食になるのではないか、という心理が蔓延。敵の思うように動けない様にすることに成功したのだ。


 その砲撃支援の甲斐もあって激戦をくぐり抜けると、目的の部屋の目の前にとうとう到着できた。


「それじゃあ二人とも、手はず通りに」


「……了解。とっとと片付けよう」


「いつでもOKだよ~」


 そして扉を一気に開くと、僕達はいきなり攻撃を仕掛けた。

 キャンプスさんとジェーン姉様が両脇にいた護衛らしき人物を魔法と銃撃で殺害し、僕は中央の偉そうなイスに座っている、豪華な法衣を纏った人物の膝を狙撃した。

 この偉そうな人物こそ、僕達が求めている人物なのだ。


「レリジオ教国教皇、フィオレンソ1世陛下ですね? おとなしく投稿することをおすすめします」


 銃を突きつけながら、ぼくは告げた。

 そう、彼こそレリジオ教国の現在のトップにして決して逃がしてはならない人物、教皇フィオレンソ1世なのだ。


「おのれ、異教徒ども……。名乗りもせず、いきなり襲うとは何事か……!」


 忌々しい目で唸られてしまった。

 だがそう言われても、僕達は正規の軍人ではない。特にハンターとして教育を受けてきたキャンプスさんがいる影響が大きかった。

 ハンターは基本的に、ターゲットを見つけたらすぐさま攻撃するか、こちらの気配を悟らせず機会を見計らって攻撃するかが多く、名乗りを上げるなんてマネは決してしない。

 相手は人間の言葉を解しないし、名乗りなんて悠長な事をやっていたら攻撃されるか逃げられるかのどちらかしかないからだ。


 その感覚で攻撃を仕掛けたのだ。

 この事はアングリア王国にも報告されるし、様式美を異常に大切にする軍人に知られたら批判されるかもしれない。

 だが、戦場は生きるか死ぬかの世界だ。様式美にこだわって死んでしまっては元も子もない、と僕は思う。


「ええい、こんなところで終わらせん、終わらせんぞ……!」


 すると、いつの間にか教皇の姿が消えた。

 いや、よく見るといつの間にかさっきまでいなかった雀がいた。


 聞いたことがあるが、才能の中には動物に変身できるものが存在する。さらに珍しい物になると、魔物にも変身できる才能があるとか。

 変身すると姿だけでなく能力もその動物や魔物のものになり、さらに他の人と意思疎通が可能であるため戦闘系の才能として認知されている。


 あの教皇は雀に変身する才能を持っていたようだが、どう考えても戦闘には向かなそうだ。

 おそらく空を飛んで逃げようという魂胆だろうが、ケガを負っている上に陸地から相当離れているため、渡り鳥でも無い限り無理だ。


 だが、行方不明とする訳にもいかない。わずかでも生存の可能性があれば、今後のセレーネの統治下で不穏分子が暗躍するリスクが高くなるからだ。


 だが、その心配も杞憂だったようだ。


 バン!!


「……この程度の距離、私には体のサイズなんか関係ない」


 キャンプスさんが即座に対応してくれて、雀に変身した教皇を打ち抜いたのだ。

 そして変身が解けると、そこには頭を打ち抜かれた教皇の亡骸があった。


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