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Episode-49 『花見前・関西弁JKの場合②』


 あかんなぁ…。

 ガラにもなく照れてテンパっとるな、うち。


 とりあえず寝間着のままじゃあかんちゅーことで脱衣所を出た辺りで一端解散。ほんで着替えて準備したらもっかい集合って感じになった訳やけど…。

 自室に戻り、覚醒した意識のままに着替えを行いながらもどこか考えはさっきの夜さんとのやりとりに持ってかれとる。


『紗凪ちゃんはすっごくすっごく可愛いよ。世界一可愛い』


 まるでそれがさも当然のことの様に息するかの如く夜さんの口から出たその言葉。

 それが冗談やお世辞の類やと頭ではまるっきりわかっとるんやけど、どうも意識がいってまう。

 それに、


「何か心からそう思っとる様な自然な言い方やったんよなぁ…、さっすが女優さんやっとる人はちゃうなぁ」


 そう感心しつつも、ぶっちゃけた話で言うと未だに少々顔が熱い。

 ふぅー、あかんあかんでぇ~。これじゃまるで百合神の思い通りの展開や。

 

 ――うん、これはあれやな言うなれば素人とプロの原理や。


 正直、うちかて可愛い的な褒め言葉を受けたこともないことはない。まぁ、大概が親戚のおっちゃんおばちゃん相手やけども。でも、そんときは普通に「おおきに」とか普通にお礼が言えた。もちろん照れることなんてなくや。

 ほんでも、今回は相手が美の日本代表みたいな夜さんや。その相手にお世辞でも「世界一可愛い」なんて言われたらそりゃ照れるやろ! うん、そりゃそうや!

 

 草野球のおっちゃんに「野球上手いなぁ」褒められても、「せやろ~」って返せる。

 ほんでも、レジェンド選手に「野球上手いなぁ」言われたら、さっきみたいに照れくさくなるはずや。

 まさしく素人とプロの原理。褒められる相手によって反応は変わんねん。


「――よって、うちの反応はごくごく自然。アイ・アム・ノーマルや。ざまーみさらせや、百合神。そう簡単にお前の思い通りにはいかへんぞ!」

 

 ………あっ、そういやここやとあいつに声が届かへんのやった。

 

 …うん、こんくらいにしとこか。

 なんや一人でやってて、ごっつ虚しなってきたわ。ほんで何より、外に夜さん待たせとるわけやしなぁ。

 

 ささっ、切り替え切り替え。

 見た目の通りうちは切り替え早いねん。

 ――よし、もううちには花見しか見えてへんでぇ~!


 思い切りよく、寝間着を脱ぎ捨ててクローゼットから適当な外着を取り出して身に着ける。

 ほんで、あとは――、


「っと、これこれ。忘れたら軽い寝不足の苦労が水の泡や」


 そう、ベットの横に置かれたクーラーボックスを手に取る。

 中身はもちろん、昨日の戦利品や。

 う~ん、夜さん喜んでくれるやろか? 

 とりま、それだけが心配やな。まぁでも、なんとかなるやろ。ポジティブシンキングこそがうちの武器やで。


「よっと」


 肩にたすき掛けのような形にして、クーラーボックスを背負う。

 そして、そんまま部屋のドアを開ける。

 案の定すでにイベントルームに続く扉の前には夜さんの姿があり、うちはそこまで小走りで近づいていった。


「すんませんね、毎度毎度待たせてもうて」


「ううん、全然。――それより、その荷物って?」


 すかさず夜さんの視線はクーラーボックスに。

 流石は夜さん、鋭い。でも、まだここで言うには早いやんな。


「これですか、ちょいとした盛り上げグッズです。あとで見せますんで楽しみにしといてくださいね」


「? うん、わかった。楽しみにしてるね」


 夜さんが爽やかに笑う。

 しかし、そこでうちも夜さんの左手側に何やら包みのようなものがあるのを発見する。

 むむっ、あれはもしや…。


「これもちょいとした盛り上げグッズだよ。お楽しみにね」


 うちの視線に気づいた夜さんが人差し指を自分の口元に当てて、そういたずらっ子の様に微笑む。

 この数日で分かりきってたことやけど、夜さんは綺麗なだけやなくてユーモアもある。全く敵わんで。

 そんなことを思いながら、


「わっかました、楽しみにさせてもらいます」


 うちも同じく笑う。

 いつのまにやら、自室でごちゃごちゃと考えていたことは頭の中から綺麗さっぱり消えとった。


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