Episode-43 『一週間が経ちまして・関西弁JKの場合』
「『明日の午前八時より一日限定で第一回イベントルーム開放のお知らせ。イベント名――桜並木で貸切花見』」
「花見?」
夜さんに読みあげられた言葉を思わず繰り返す。
そんくらい予想外の内容やった。
「そりゃあ、まあ花見の季節ですけど…。そういや、よう考えたらうちここに呼ばれる直前に花見してますわ」
「あ、そっか。関西の方がこっちより開花時期早いもんね」
「そうなんすよ。んで毎回三月三十日にやるのが我が家の通例なんです。まぁ、開花時期遅れたり雨降ったら中止ですけどね」
「へぇ~、仲良し家族だね」
「ですかね? やっぱ自営業の店なんで休みの日とかもそこそこ融通効くから家族で色々すんのも多いんですよ」
まっ、そのぶん普通に土日とかもいっつも働いとるんやけどね。頭下がるわ。
そういやうちがここで一年を終えて元の世界に戻ってもあっちでは花見がついちょっと前のことなんよなぁ。改めて不思議な話や。
「ほんで、書いてあるんはそれだけなんですか?」
「ううん、さっきのはタイトルかな。その下に概要が色々と書いてある。続けて大丈夫?」
「はい、よろしゅーたのんます」
うちの言葉に夜さんが頷き、再び朗読に戻る。
「読んで字の通り、今まで使用できなかったイベントルームが明日の午前八時から一日花見のできる特設エリアとなって解放される予定だ。利用するしないは自由だが、しなかったら絶対に後悔するぞ。それだけのものであると保証しよう」
「ほぉー、えらい自信やな」
「そして気づいたかもしれんが、第一回という言葉の通りこれから第二回第三回とイベントルームでは色んな企画が準備してある。季節にちなんだ企画やレクレーションのようなものなど多種多様なものを考えているため楽しみにしておくように」
「文化祭の実行委員みたいなやつやな…。こっちを楽しませるためのやる気がえぐいわ」
テレビといい運動場といい、百合神自身もそういう企画とか設計とか好きなんやろなぁ。
まぁ、こっちにしてもそれはええことやけど。
「これで終わりかな。今回は追伸も無し」
「ほぉ~、要は明日あの扉の向こうが花見スポットになっとるってわけですね」
「だね、今まで鍵がかかってたのはあの部屋の中には何もない状態だったってことなのかな?」
「かもですね。イベントルーム言うからゲーセンでもできるんかと思ってましたよ。鍵かかっとんのはまだつくり途中やと」
「ねぇ~。やっぱりあれだけ百合神様が勿体ぶってたんだから凄い部屋だったんだね」
もう何度目かわからない百合神のつくった明らかに人間世界を飛び越えた設備に二人してクスリと笑い合い。
今さらやけど、これ元の世界に戻ったら生活の違いに違和感バリバリになるんやないやろか?
まぁ、それをいま考えてもしゃーないか。それよか考えなきゃならんことがあるわけやし。
「ほんで、明日の花見どうします?」
「うーん、私はどちらかと言えば乗り気…かも」
「ハハッ、うちもそんな感じです。明日の予定決まりましたね」
「よかった、じゃあ明日は二人でお花見だね」
「ですね。あっ、そういやよう考えたらうち家族以外と花見行くん初めてですわ」
「そうなんだね。実は私もそんな感じ、というかお花見自体がかなり久しぶりかも」
少し恥ずかしそうに頬をかきながら言う夜さん。
そりゃ明らかに花見でテンション上げて騒ぐタイプには見えへんしな。それに今を時めく虹白夜が花見会場に現れたら花見やのぉて夜見になるやろ、いや割とマジで。
芸能人も苦労しとるんやろなぁ…。
――よし、ここはいっちょうちが明日の花見を夜さんがメッチャ楽しめるようにひと肌脱いだるで!!
そんなこんなで急遽うちら二人の明日の予定が埋まったわけやわ。




