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Episode-29 『運動場にて・関西弁JKの場合②』


 まさに当たった瞬間に確信って感じのやつやった。

 ちょいと夜さんの前でカッコつけてもうた手前、打ち損じたらメッチャ恥ずいと思っとったんやけど、うちの腕も中々どうして捨てたもんやないな。

 

「おっし、スペシャルスポーツドリンク貰い」


 プロ野球選手の様にバットを軽く放るように投げる。 

 そして同時にうちの打ち返した打球は綺麗に目標の『特別商品』に命中した。

 ふっ、どんなもんや。


「かっこいい~…」


 そんなうちを見て、夜さんが感慨深そうにそんなことを呟く。

 さすがにそこまで直球に褒められるとちょいと恥ずい。でも、当然悪い気はせーへんな。


「ありゃ」

 

 が、そこで気づく。

 とりあえずこれで目標達成と思うとったけど、ピッチングマシーンは停止せずにまだ次の球を投げようとしとるみたいやな。よーわからんアニメみたいな女の子の絵が投球フォームをとっとる。

 まあ、そりゃそうか。しゃーない、とりあえずに10球打ったろか。飲みもんもどうせなら1個だけやなくて2個の方がええやろ。


「よし、全部打ったるわ」


「がっ、頑張れ紗凪ちゃん」


 夜さんからの声援を背に受けながら、うちは金属バットのグリップをもう一度握り直した。


***―――――


『10球しゅうりょう…、結果はホームラ7本ヒット3本。そのうち『特別商品』に命中が2回。…ちっ、あなたはもうちょっと上のレベルでやるべき…。だから、もうチャレンジとかかんべん…、というかもう来ないで…』


 結果、10球を打ち終えてその全てが中々いい当たりやった。狙い通り、もう1回『特別商品』にも命中。

 でも、何でいい結果出したのにピッチングマシーンのテンションが低く不機嫌そうになんねん。本物のピッチャーやあらへんのやから。

 その上、舌打ちしながらちょっと悪態ついてきよったし。あの機械どっか百合神に似とるな。主にこっちの神経逆なでしてきよる感じとか。

 …もっかい、このモードで開始スイッチ押して滅多打ちにしたろかな。


「紗凪ちゃん、すごーい!」


 一瞬、そんな邪悪な考えが浮かんだけど無邪気にそんな風に喜んでくれる夜さんを見てそのうちの気持ちは浄化された。

 あっ、そや。夜さんごっつのど乾いた言うてたんよな。


「で、その特別商品ってどこから出てくんねんな」


『うるさい…、ちょっと待っててほしい…』


「いや、別にうるさないやろ」

 

 電子パネルからその姿は消えたが、答えたのはあのアニメキャラの声やった。

 そして、数秒後。


「ん? うおっ!?」


 急に頭の上が重くなった。

 そして次の瞬間、両手で反射的に頭の上に出現・・した何かを抑える。

 

「…あの、夜さん。いま、うちの頭の上って何ありますか?」


「えーっと、プレートが1枚あってその上にペットボトルが2つ乗ってるよ」


「ほんなら、それがスペシャルスポーツドリンクってやつでしょうね。――というか、なんでそもそもうちの頭の上に出現しとんねん!」

 

 そう悪態を吐こうにも、もう帰ってくる声は無かった。

 うん、これは後で百合神のアホに問い詰めなあかんことができたな。どう考えてもあいつの管轄やろし。

 まあ、今は夜さんに免じて後回しにしたるけど。


「ほいっと」


 ゆっくりと落とさない様にその頭の上に乗ったプレートを手に取る。

 夜さんの言う様にその上にはペットボトルが2つ。おまけに『体力全回復・スペシャルスポーツドリンク』とカラフルなラベルがついとる。

 謎の怪しさがあるな…。


「はい、夜さん。どうぞ」


「ありがと」


 まー、そこに突っ込んでもしゃーないしとりあえず夜さんに片方を渡す。 

 ん、ペットボトル結構冷えとるな。こういうとこは気が利くんよな~。変なやつやで。


「すんませんね、のど乾いてたって言うてはったのにちょっと待たせてしもうて」


「ううん、全然。紗凪ちゃんのバッティング見てたらすぐだったよ。運動神経良いんだね、尊敬しちゃう」


「いや、そんな大したもんとちゃいますよ。部活でいっつも運動しとるからスポーツ全般いけるってだけです」


「へぇ~」


 照れ隠しにそんなこと言いながら、二人してバッティングセンターから出る。

 そして、そのまま運動場の中でどちらかが言う訳でもなく、自然と二人同時くらいに地面に腰を下ろした。

 でも、なんやかんやでうちもちょっとのど乾いたな。


「じゃあ、ちょっとこれ飲んでみますか」


「そうだね。どうしよ、念のため味の下見も兼ねて私が先に飲もうか?」


「…まぁ、確かにようわからん色しとるから味の想像はいまいちつきませんよね」


 そう、このスペシャルスポーツドリンクとやら何故か煌びやかなピンク色をしとる。

 中々に珍しい色やな。下見という単語を使いたくなる夜さんの気持ちも普通によーわかる。下見やなくて毒見と言いはらへんかっただけ、百合神はありがたく思った方がええわ。


「いや、こういうのは一緒に飲むのがやっぱええでしょ」


 だが、うちは夜さんのありがたい心遣いを丁重にお断りして、キャップを回す。夜さんを実験台にするわけにはいかへんし。

 夜さんも「そうだね」とだけ言って頷き、同じくキャップを回した。

 

「ほんなら、夜さんの初バッティングセンター体験記念というわけで」


「フフッ、オール三振だったけどね」


「一年もありますし、たまに気が向いた時にでもやれば上達しますよ」


「かもね」


 昨日の風呂上りのコーヒー牛乳を飲んだ時の様に軽くペットボトルを重ねて乾杯をする。

 そして、二人してグビッとペットボトルを口元に向けて傾けた。


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