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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第1章 café「R」〜ふたりの出会い、みんなの出会い〜
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《第6話》勢いって大事なのかな!? 〜リーマンの思惑②〜

「なぁ、三井、」


 熱いコーヒーに入れ替えてはみたが、手の中で湯気が上がり続けている。

 今日の連藤は仕事をする気がないようだ。


「なんだぁ?」


 三井もコーヒーを継ぎ足しながら振り返った。


「なぁ、嬉しくない特別な日ってあるのかな」


 意味がわからない。

 連藤のデスクに腰を寄せると、ふぃとコーヒーを吹き、口をつける。


「珍しく主語が抜けてるぞ。

 どういうことだ?」


 連藤を見下ろすが、彼は遠くを眺めたままだ。

 目が見えないからではない。

 いつもであれば、声のする方に視線を結んでいる。

 目が見えない分、聞いているぞというアピールをそれで表現している。

 が、彼は、天井に視界を置いている。

 何かを思い出しているのだろうか───


「昨日、彼女とワインを飲んだんだ。

 結構いいものだったから、高いんだろ、と聞いたんだ。

 そしたら彼女が、今日は特別な日だからと。

 誕生日かと尋ねたら、違うという。

 声音から見て、嬉しい日ではなかったんだ。

 だが、何かの日でいいお酒を飲みたかった。

 どういう意味だと思う」


 訊ねているのか、考えているのか、目に表情がない分、彼の雰囲気で判断するしかない。

 思いつめているのだけはわかる。


「さぁな。なんだろうな。

 辛い記憶の日だから、うまい酒でごまかしたいのか、

 あとは思い出の酒だったのか」


「思い出の酒か……」


 確かにあのワインは年代ものだった。

 自分の目が見えないのが悔やまれる。

 せめてエチケットがわかればまた違うのかもしれない。


 いや、なんにせよ、何かの記憶に寄り添う酒だったことには違いない。


 何故、自分がそこにいたのだろう。


「誘ってよかったのかな……」


 またコーヒーが冷めてしまった。


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