《第172話》続・丸鶏を焼きます、平日に。あと、ザジギソースも添えるよ!
ザジキソースを作っていても、莉子は丸鶏を忘れたことはなかった。
流れ出た油をかけ、皮をパリパリになるように調整しつづけたのだ。
そうして焼き上がった丸鶏は、実に飴色のいい色に染まっている。
「いい香りだ……ありがとう、莉子さん」
「いえいえ。私が連藤さんと食べたかったんです」
よく冷やしたロゼを添えて、莉子はさっそくと丸鶏を解体していく。
手羽に胸肉、そして、中に詰めていたガーリックライス………
連藤に皿を差し出すと、カッと目を開いた。
「香ばしさがいい……はぁ、いただいてもいいかな?」
「はい。めしあがれ」
莉子もさっそくと食べ始める。
肉はしっとりと蒸し焼きになっていて、ほろほろと柔らくおいしい!
もちろん、皮はパリパリだ。食感の違いがあるのは、より楽しめる。
ザジキソースに合わせると、これがいいアクセントになる。
ロゼワインがすっきりとリセットしてくれるのもあるが、さっぱりした酸味の強いソースは、鶏肉をいくらでも食べられるようにしてしまう魔法のようだ。
ただニンニクのがっつりしたパンチもあるため、淡白な鶏肉に厚みがでる気もする。
「莉子さん、ガーリックライスが鶏の脂を吸ってて、めちゃくちゃいい」
連藤さんが、興奮してる……!
莉子はひさしぶりの連藤のリアクションに驚きながらも、ガーリックライスを口に含んだ。
「………おお! おー、これ、やばいですね」
ガーリックライスは鶏の脂をすって、若干リゾット風になっているのだが、それよりも旨味がヤバい。
語彙力がなくなるぐらいだ。
しっかりと鶏の旨みを吸い込んでおり、噛み締めるたびに鶏のいい風味が広がる。
決して生臭いなどはない。
もう、ご飯が、旨みの塊になっている。
どこかで見た、料理漫画に、こんな料理があったのではないだろうかと思いつつ、想像の味はここにあったのかと、莉子は感動する。
「おいしいですね、これ。こんなに脂を吸うなんて知りませんでしたよぉ」
「俺もだ、莉子さん。また、作って欲しい」
「はい。私もまた食べたいですっ」
改めて鶏肉をほぐし、骨をほどき、旨みを堪能する二人だが、見る間に骨になっていく丸鶏───
「……はぁ………すこしゆっくり飲んでから、デザートにしようか」
連藤の声に、莉子は「………そうしましょ」思わず、お腹をさする。
鶏油が腹に溜まっているのがわかるからだ。
美味いものはだいたいカロリーがオーバー気味だ。
だが、久しぶりの旨み、堪能しないわけにはいかなかった。
「………ダイエットは、週末にしようかな」
莉子の意思は、弱めだ。





