表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第2章 café「R」〜カフェから巡る四季〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/218

《第15話》本日、定休日なり。

オーナーの定休日の日。

どんな休日を過ごしているのでしょうか?

やっぱり休みもワインは欠かせません。

 火曜日は定休日。


 昨日の夜は良いのか悪いのか、お客様が遅くまでおらず、片付けまでしっかり終えることができた。

 なので、繰り越した業務はなく、今日はのんびりできそうだ。


 というのも、カフェ店舗の上は、居住空間なのです!


 以前は自転車で通っていたのだが、今は階段を降りたらすぐ厨房。

 理想的な環境といえばそうだが、休みと区別しづらくなるのも実はあったり……

 とはいうものの、彼女はすぐにカフェと居住区の国境を作り上げた。


 上ってくる階段が国境となり、2階の扉を開いたら国境を越えたことになる。

 そこに入れば、休憩するところとなるのだ。


 休みは休み!


 彼女の頭の切り替えはとても早い。


 いつもなら7時前後には起きているが、今日は8時ごろにのんびり起き出すと、洗濯機を回し、床にモップをかけていく。

 トイレ掃除をしてからお風呂を磨き、棚の整理と片付けが終わったところで、洗濯機が終了のアラームが鳴った。すぐに洗濯物を干して、さらに床を水拭き用モップで磨いていく──


 見渡すと1LDKの居住空間は、埃が消えてすっきり片付いた部屋となった。

 しかし、一週間の間、寝て起きてるだけの部屋なのに、よく塵も埃も溜まるものだ。

 ため息に似た深呼吸をすると、拭き終わったモップシートを捨てて、しっかり手を洗い上げる。

 コーヒーを飲むためだ。


 腕時計を見ると10時30分を指している。

 まだまだ今日は始まったばかり。

 少し浮かれた気分で豆の香りを嗅いでいく。

 いくつかサンプルで豆をもらうことがあるため、今日はブラジルの豆を選んでみた。

 甘みがあり、酸味が少なめというので、自分好みである。

 電気ケトルに水を注ぎ、スイッチを押す。

 次に豆を計り、下に降りれば電動のグラインダーがあるのだが、ここにあるのは手動のグラインダーだけだ。

 豆を入れて力強く回していく。

 回すたびに香ってくる匂いが、自分の好みの香りで嬉しくなる。

 手の感覚で自分の求めている粉のイメージをしてみる。

「こんなもんかなぁ……」そんなもので、いつも適当だ。

 ボダムのステンレス製のフレンチプレスに粉を入れ、沸かしたてのお湯は熱すぎるので、一度使うマグカップに注いで温度を下げる。再びこんなもんかなぁのお湯をプレスの中に注ぎ入れ、30秒ほど待ち、さらにお湯を注いで3分待つ。

 タイマーの音が合図を出した。

「できたよぅ」彼女は目を輝かせながらゆっくりとプランジャーを下ろしていく。

 浮き上がっていた豆が下がるごとに甘みが溶け出すようで、この工程が彼女は一番好きだ。

 そして温めたカップにゆっくり注いでいく。


 大きめのマグカップからは湯気とともに、コーヒーの深く苦い香り、奥から酸味と一緒に蜜のような香りも漂ってくる。


「はぁ、素敵」

 

 革張りのソファに腰を下ろしながら、携帯を操作して音楽をかける準備を始めた。

 部屋に備え付けのスピーカーから音楽を流すことができるのだ。

 パソコン、携帯、どちらからでも可能で、映像もテレビとリンクさせて再生することができる。

 便利になったものだ。


 ……というか、ここまでの設備、本当に必要だったのだろうか。


 言われるままにお願いをし、昔から描いていた部屋を創りあげていただいたのだが、いくらかかってるんだろう。

 すべて補償の中に含まれているため、よく見えていない。


 自分の稼ぐお金じゃ一生かかっても払えないお金がかかっているんだろうなぁ……


 なんて思ってもみるが、実際右手は動作が鈍くなったし、雨の日や寒い日は痛むこともある。

 一生付き合っていく怪我なのだから、そして莉子にとってはこの腕が商売道具。

 これぐらいしてもらってもいいのだと思う。

 そう思おう。


「よし、今日は洋楽にしよ」


 ランダム再生にしたら一曲目はSiaの曲である。

 ハスキーな声と高温と、少しアンニュイな雰囲気のメロディ───


 なんとなく晴れでもない今日の天気に似合っていいものだ。

 コーヒーを飲みながら、昨日余ったケーキを頬張った。

 ビターチョコとケーキのしっとり感がコーヒーとよくマッチしている。

 なんて至福のときなのでしょう。

  ソファの傍らには文庫本が置かれていたりする。

 コーヒー片手に読むためだ。

 しばらく読み進められていなかった。

 ページをめくってみる。

 ……しおりの4ページ前から読み返すことにする。


 本を読み終わると時刻は、12時30分。

 お腹も空いてきた頃だ。


「さて、今日はなんにしようかなぁ……」


 冷蔵庫を覗いてみると、白ワインが余っているではないか。

 しかもリースリングワインだ。アルザスのリースリングなので程よくキリッとしていて、軽めでありながら味わいがしっかりしている。フルーティな後味もいい。


「したら、豚バラで生姜焼きと、ズッキーニあるからマリネにするかなぁ」


 莉子が動いた。


 料理となると、いや、ワインとなると動きは早い。

 特に昼から飲もうと思っているのだ。


 1分でも早く飲み始めたい───


 まずはズッキーニを輪切りにし、油をひいていないフライパンに並べる。

 焼き色がつきまでじっくり焼いていく。

 その間にオリーブ油、ワインビネガーと塩胡椒で調味したマリネ液を琺瑯バットに作り用意しておく。

 こういう時の琺瑯はとても便利だ。

 匂いがつかないし、汚れも染みつかず、手入れがしやすい。

 次に塊の豚バラ肉があったので、5ミリ程度の厚さに食べたいだけ切ってみる。


 ……多かったかもしれない。


 三人前はありそうだが、まあいいだろう。


 塩を振って馴染ませ、もう一つフライパンを出し、油をのせた。

 温まったらほどほどの弱火でじっくりと豚バラを焼いていく。

 カリッとさせるのと、余分な脂を落とすためだ。


 焼いている間に生姜焼き用のタレを準備し、さらに焼きあがったズッキーニをマリネ液に浸す。

 浸したズッキーニは冷蔵庫へしまいこんだ。冷えていくほどに味がしみるのだ。


 これからは肉との対話だ。


 「まだダメですよ」

 「もうちょっとで焦げますよ」

 「いい感じですよー」


 そんな会話を繰り返すこと数分、じっくりと焦げ目が浮き上がってきた。


 余分な脂を吸い取り、生姜焼き用のタレをじゅわりと注ぐと、香ばしい匂いが立ち上ってくる。

 絡めるようにフライパンを揺すりながらタレを煮詰めていく。

 みりんも入っているタレなので甘辛タレはとろみがでて、肉に照りを与えてくれる。


 皿に広げたレタスの上に肉をのせ、一品完成。

 あとは適当に切り落としたキュウリをオリーブオイル、レモン汁、塩胡椒で味付けしたサラダを小さな小鉢に盛り付ける。

 ズッキーニは食後のおつまみにするので、まだ冷蔵庫で大丈夫。

 しっかり冷やして味を染み込ませよう。


 そして先ほどのリースリング!


 本当ならご飯も食べたいぐらいだが、ご飯を食べたらお酒が飲めない体質なので、今回はご飯の出番はない。


 さてさて、豚の甘辛味と脂の旨さがどう絡んでくるか───


 まずは一口ワインを含む。

 やはりリースリングは初夏のイメージになる。

 爽やかな香りと甘み、果実味が口の中に広がる。

 程よい酸味が柑橘系のイメージを湧き上がらせる。


 そこへ、豚バラ肉を放り込んだ。


 豚バラの脂の甘みがじわりとでてくる。

 少し焦げた風味がキャラメルのように感じる。

 ここでもう一口ワインを含むと、


「おお!」


 キャラメルの風味がワインに合わさり、味がふくらんでいく。

 さらに豚バラのしつこさがすぅっと消えていく。

 これはリースリングの酸味が程よくあるからだろう。


 そして口休めのキュウリ。


 この青臭さがまたこの白ワインと合います。

 キュウリだけれど、キュウリじゃない。


 初夏の香りが口の中に広がるようです───



 大きく幸せのため息を吐くと、彼女は曲をジャズに変えた。

 ちょっとおしゃれな雰囲気にしたかったのだ。



 豚バラ、ワイン、キュウリ、ワイン、豚バラ、豚バラ……

 ちょっと休んで、ズッキーニ、豚バラ、ワイン、ワイン……


 どれぐらい飲んだだろう。

 気づけば5時が過ぎている。

 だらだらとしすぎたか──


 コメディ映画の鑑賞も2本目になった。

 最近はネットで映画が観れるので、家から出る必要が本当にない。

 インドアな自分には恵まれた環境である。

 ウォーキングゾンビランドを再生して20分経っただろうか。

 携帯が鳴った。

 画面は連藤となっている。


「はい」


「今、何してるんだ?」


「ん?

 ウォーキングゾンビランド観てる」


「実は近くにフレンチの惣菜屋ができてて、

 一緒に食べたくて買ってきたんだが……」


「ドアの前にいるってこと?」


「そういうことだ」


「うん、わかったよー」


 裏口専用の階段を降り、笑顔で大きく扉を開けるが、すぐさま扉を閉めた。


 人数が多い。


「ちょっと、莉子さん、開けてよー!」瑞樹の声がする。

 細く扉を開けて目を覗かせると、


「なんで連藤さん以外もいるの?」


 怒った声が莉子から返ってきた。

 だがそれよりも何よりも、酒臭い。


「昼間っから飲んでたくせに、ガタガタ言うなよ」三井がこぼすが、


「二人の時間を邪魔しにくるあんたらが悪いんでしょ?」


「いいじゃん、今日、ランチで食ってみたらめっちゃうまかったら、莉子さんにも食べさせたいなぁって思ったんだよ?」


 子犬のように瑞樹が返し、


「それに、ワイン」


 ぶっきらぼうに巧がワインを差し出してきた。


 細い隙間から手を出し、袋ごと奪っていく。

 さながらシャコかというほどの瞬発力だ。

 莉子はまじまじとボトルを見つめ、


「フランスのボルドーのサンテミリオンに、メドックね……

 よし、入れ」

 

 こういう日もあるものだ。

 外に出なくても、誰かに会う日。


 月に1回はある気がするけど───



コーヒーもワインも香りが大事。

だと思っております。

香り、味と2回楽しめるのが、私にとっての魅力ですねー

豚バラの生姜焼き食べたい……

私も毎日ワインが飲みたい!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ