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《第1話》café「R」ープロローグー
木々の枝に飲まれそうなそのカフェは、隠れ家的な雰囲気がある。
道路に面した大きな窓からは店内が見渡せ、窓際に2名掛けの席が2つ、カウンターが窓と対面にあり、白いシャツを着た小柄な女性がカウンターの奥でグラスを拭きあげている。
ゆっくりとガラス戸が開かれた。
「いらっしゃい」
落ち着いた声がカウンター越しにかけられ、水の入ったグラスと一緒に席へと案内される。
いつも彼が案内されるのは4名掛けの席、通路側になる。カウンターから見ると背を向ける形だ。
「連藤さん、いつもの?」
そう聞かれるようになるまで、何か月かかっただろう。
ここに連れてこられたのは、もう半年前になる──