第一話『筋肉系主人公はもう古いですか?』
俺は、いわゆる「異世界召還」という物に憧れていた。
異世界召還というのは、突然リアルの世界とはかけ離れた世界に飛ばされ、モンスターを倒し、
助けた姫君とキャッキャウフフし、またモンスターを倒し、偶然出会った獣耳っ娘とフラグ建築し、
さらにモンスターを倒し、エルフの女の子とかと以下説明に五十分以上かかるので割愛。
ああ「異世界召還」。
なんて甘美な響きだ「異世界召還」。
ビバ「異世界召還」ーーー
そんな美しき超常現象に俺は憧れていた。そう、憧れていたのである。
さて、もう気付いた人達もいると思うけどあえて言うよ。
なぜ『憧れている』ではなく『憧れていた』なのか・・・
それには深ぁ~い訳がある。聞きたい?よしきた。
そう、これは今からほんの少し前のお話さ。
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つららが落ちた。
なんの事はない。家の屋根に出来てた、立派でイヤに鋭いつららが何かの拍子に落ちてきたのだ。
ここは北海道で冬ど真ん中。そりゃ立派なつららも出来るさ。
だが、重要なのはつららが落ちたという事実ではなく、落ちた場所だ。
何処に落ちたと思う?聞いて驚くなよ?
なんと俺の脳天よ!
ギャグ漫画みたいに恐ろしくぶっささったよ!!
え?俺は無事かって?
ははは、もちろん無事さ。無事に無事!
しっかり無事に死んだよ。
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「あんたって、ホントにぶすいなのね」
気がつくとそこにはピンク髪の少女・・・いや幼女が立っていた。
「無粋って・・・なにがだいお嬢ちゃん?」
俺は口の悪いロリに向かって、極めて優しい口調で聞いた。
「ぐが!おじょ・・・?しょうかんのメガミであるわたしにむかっておじょーちゃん?!ぐががががはらたつぅーなのね!なんでこんなのがえらばれたのかしら!?こんせーきさいだいのナゾなのね!」
喋り方もひらがなちっくなこの毒舌幼女をどう扱えばいいのか俺の方が謎だわ!
「あんたはきょうシんだにんげんのなかでちゅーせんでえらばれた、イセカイにしょうかんされるらっきーぼーいなのね。ヨロコビなさいなのね」
・・・・?はぁ?
「なにをいいだすんだコイツは・・・みたいなかおね・・・」
「顔っつーか、普通に言うよ何を言い出すんだお前・・・」
「いわなくていいっつーのなのね!!」
自称召喚のロリ女神は親の敵のように地団駄を踏んだ。
「さっしのわるいあほね・・・まわりをみてみなさい」
「まわり?って・・・ぬおあ!?」
さっきから自称ロリ女神に夢中で気がつかなかったが・・俺のまわり360度には雲や虹色の空が広がっていた。
「まぁ、ここが現世でないことは分かった。」
それで、と一言
「異世界に召喚の詳細はよ」
常人にはついてこれないであろう超人的変わり身の早さで、俺は身を乗り出し、興奮や期待などの感情を隠せない表情と鼻息で女神に詰め寄った。
「そのままきいたとおり、あんたはこれからいせかいにショウカンされるってことなのね。そっからはなにをするのもあんたのじゆーなのだけれども・・・ホントにあんたってぶすいなのね」
女神は深いため息をついた
「はっはっは!この俺にいったい何のご不満があるので?」
「あんたのそのきんこつりゅうりゅうなすがたにはらたってんのなのね!!!!」ーー
ピンク幼女の怒りに満ちた怒声が虹色の空間に響き渡った
ーーーふつーさいきんのいせかいもののしゅじんこうって、ホソミでひきこもりだったりニートだったりなのに、あんた、もとイギリスのとくしゅぶたいたいいんじゃないのなのね!!!!だいたいあんたのけいれきいろいろバケモノじゃないのなのね!こんなぜんせいき○ュワちゃんみたいなたいけいのやつがいせかいいっても、みてるがわからしておもしろみもくそも・・・・・・
アメコミヒーロー的ボディの俺、『瀬川 大喜』が異世界ファンタジーに憧れるのはそんなにも罪ですか?