序章《三》
「え……!?」
いきなり後ろから声がかかり、俺はびっくりして振り返った。
振り返った先にいた人物に俺は目を点にする。
「お前、誰だ…!?なんで勝手に俺の部屋に……つかなんだよ、その格好……」
訳が分からない俺に、派手な格好をした冷静な男は息を吐き口を開いた。
『私は時を渡る神だ』
「は!?時を渡る神!?」
なんだよ神って……まさか俺、夢でもみちまってんのか!?
寝落ちした、とか?
慌てふためく俺は頬をつまみ、ギューと指で捻る。
「痛い…これは、現実なのか?」
『煩いぞ、少年。これは現実だ。決して夢ではない。少年はそんなに、幕末が好きか。人間関係より歴史という時の流れを好むほど』
「……」
歴史という時の流れを好む…。
確かに、この派手な時を渡る神という奴のいう通りかもしれない。
この際、時代小説があれば人間と関わらなくたって俺は生きていける気がした。
寂しくなんてない、と。
俺はああ、と頷く。
「そうだけど。母さんも父さんも自分の意思ばっかりだろ?そんなつまらない世の中に生きていたって、どうしたらいいんだよ」
『……なるほど。少年も、不遇な世に生まれたの』
少年って…。
俺、高校生なんだが。
俺は心の中でそう愚痴りながら、時を渡る神ってのを見た。
本当に派手だな……。
ご丁寧に漫画とかアニメにある、天使の羽根までくっついてる。
信じがたいが、真実みたいだな。
そう確信した俺はそれで?と時を渡る神をみた。
「……あんた、本当に俺を幕末に連れて行ってくれる訳?」
『…少年が望むのであれば』
望むのであれば、か。
答えなんて決まってる。
俺は携帯をポケットに入れた。
これは証拠用。
あと今の時代で食べるのど飴とかガムとか電池とかイヤホンとか。
学校のカバンに突っ込むと、準備出来たと言った。
『家族に挨拶のひとつもせんのか?』
「必要ないよ。俺は俺の好きなように生きるさ」
『……ならば』
神がボソボソと何かを唱える。
すると光が俺を包み込んだ。
『もし何かあれば私を呼べ。他は好きに歴史を変えるなり、何なりすればいい少年』
「わかった!」
願いは叶わないと考えていたけれど。
神っているものなんだー。
俺はそこまで思い、意識を失った。