序章《二》
図書室から出て学校から帰宅した俺は、自分で鍵を開けて家に入った。
「ただいまー」
「あら、まこと!お帰りなさい!」
中に入れば出迎えてくれたのは、母さんだ。
母さんはかなり美人で周りにも評判だが俺はそういうのに興味はない。
「ごはん、どうする?ハヤシライス作ったけど下で食べる?」
「ああ、そうするよ」
俺は母さんにそう返し、部屋に上がった。
続きが読みたくてウズウズするが、仕方ない。
俺はため息をつきカバンを放り投げると、リビングに向かう。
(「父さんは多分、まだ仕事場だろうな」)
外資系の仕事をしている父さんは、帰りが遅い。
母さんは寂しがっているようだが仕事なんだから仕方ないと、俺はいつも励ましているつもりだ。
「まこと、座って?食べよう」
「……わかった」
母さんに呼ばれ、席につきいただきますをして食べる。
この会話も何百回しただろうか。
専業主婦な母さんは、パートも何もしていないからいつも家で一人だ。
だからなのか、俺が帰ってくるとかなり嬉しそうな顔をする。
そんな母さんに対し俺は迷惑で仕方なかった。
もう高校生だ、自由にしたい。
母さんだって父さんがいないのだから、好きにすればいいのに家に留守番役と言っていつもいる。
そう言われては俺は早く帰る他なく、遊びを誘ってくれた友達にも断るしかない。
そのため、段々俺には誰にも寄らなくなった。
最近では何をするにも一人だ。
いじめを受けている訳ではないが、それが少し腹がたつ。
だからこそもしかしたら、幕末など日本史に惹かれたのかもしれないと思った。
正直言ってつまらないこの世の中に、飽きた。何か刺激が欲しいと。
母さんの料理を褒め、たらふく食べた俺はごちそうさまといい素早く片付けて部屋に戻った。
途中母さんが寂しそうな顔をしたら、どんな会話をすればいいかも分からずすぐに無視した。
ベッドに転がり、放り投げたままのバッグを俺は開け借りた時代小説を読む。
「激動の幕末、か。どんな世界だったのかな……」
あの時代、生きるか死ぬかの時代で新選組は土方歳三はどのように感じたのだろう。
刀を握り、血を流し、幾人の人を殺した彼らは何を思ったのだろう。
歴史をみたい。
幕末を、土方歳三が見た時代を。
たとえ、己が死んだとしても。
そう思った時だった。
『そんなに好きなら、幕末に行くか?』