序章
「はあ、寒いな……」
平成二十五年、十一月二十日のこと。
俺 新島まことは高校二年生。
今日も図書室でひとり、日本史ジャンルを読み漁っている。
日本史、といえば昭和や明治の時代が目立ちあまり好きじゃない、面白くないって思う学生がほとんどだろう。
大人さえ、日本史のことを知らない人間もかなり存在する。
そんな中でも俺は、昭和とか明治とかドロドロした日本と外国の関係よりももっと昔ー今から約百五十年ほど前の江戸時代後期、幕末が大好きだ。
日本史が大好きと周りに話すと、「日本史の何処がいいんだ?」と否定されてしまう。
でも、それは日本史を学ばないから面白さがわからない訳で。
もちろん彼らが悪い訳ではない。
今のこの世の中が、日本史というものを知らないからであって。
その知らないというのもきっと幕末や日本史の良さなんだと思い、俺は幕末を読み漁る。
本日は最近入ったって本好きな図書委員が話していた、時代小説だ。
これは幕末に生きたー最も大好きな偉人 土方歳三が生きた生涯が描かれている。
物語が史実であることから、新たなエピソードなど彼の思いや考えを綴っているが今まで読んできた土方歳三もので一番面白い。
ちなみに土方歳三とは、新選組という幕末最後の武士と呼ばれる男たちのこと。
京の都を守るため近藤勇、土方歳三、芹沢鴨らに寄って達成された新選組だが実際は【壬生狼】と称され恐れられていた。
時代に翻弄された彼らもやがては、その運命を桜の如く散り去って行くのだが…。
俺は彼らの生き様に惹かれた。
特に、【鬼の副長】土方歳三を。
土方歳三は、現在は東京、昔は多摩の石田村という場所に生まれたそうだ。
農民の出で生家の薬である【石田散薬】を売っていて、奉公など様々な仕事をしたが合わずそんな折、同じく近藤勇と出会い近藤勇が住む天然理心流の道場に住み着いた、という記録が残されている。
土方歳三は戦場でも、かなりの策士だったらしい。
俺は小説を十ページほど読み終えるとはあ、と息を吐いた。
「かっこいいな……」
そこらの女子がキャーキャー騒ぐイケメンとかいう芸能人より、よほどかっこいいと思うのは俺だけだろうか。
農民でありながら、最後の最後まで武士で在り続け戦死した彼。
いつか彼と出会えたら、共に歩んでみたかった。
そして聞いてみたいと思った。
戦死した時、どう感じたのかーなど、色々。
毎日想う、俺の唯一の願い事だ。
俺は叶いはしない願いを想いながら、ふと図書室の窓に目を向けた。
気付けばもう夕焼け空で、どうやらいつのまにか読書にいや、土方歳三に没頭していたらしい。
「そろそろ帰るか…校舎もしまっちまうし」
俺はこの時代小説を借りようと、図書カードに書いてあった場所に返し図書室を出た。