第九十七話 トリカゴ
目が覚めると、私は森の中にいた。ここはどこだろう。なんだか、長いこと夢を見ていた気がする。
「ユーリ、早く帰ろう」
「──うん、モーキュネスト」
なぜだかその名前は覚えていた。モーキュネスト=グランディア。私の唯一の親友。
「あのさ、モーキュネスト。ここはどこなの」
「ここ? 鳥籠、だよ」
「……? 」
「私もユーリもずっと囚われていて抜け出せないの。なのに勝手に100年以上もうろうろしちゃうなんて、ユーリはすごいよ」
「……その記憶もないし、ここに関することも分からないの」
「大丈夫だよ、一から私とやり直せばいい話なんだから」
モーキュネストはにっこりと笑い、私の手を引っ張った。目の前に小さな小屋が現れた。
「お帰りなさい、ユーリ」
「──お母様? 」
「私のお母さんだよ、ユーリ。本当にハジマリからやり直さないといけないんだね」
「ジェスティナ=グランディアよ。勝手にいなくなるのだからびっくりしちゃったわ」
「神殿にはまだ帰せないね。しばらくゆっくりしていって」
神殿? 私は神殿の者なのだろうか。
ジェスティナさんの出す紅茶を味わい、これまでのことを説明してもらった。
私は神殿に住む美の女神と豊穣の神の娘で、名前はユーリ。知識が昔から豊富すぎたが故に、眠り姫となり、鳥籠から抜け出したという。
突拍子な話だが、そんな気もしてきた。多分。
「危険だから私達が引き取ったの」
「冒険話、聞きたかったのになあ」
「モーキュネスト、ダメよ」
冒険話。私は記憶が全てない。
これからどうしろと言うのだろうか。
夜。私は記憶を取り戻すべく、森をさまよった。長いこと眠り姫になっていたせいか、私は眠れなかった。バカだねえユーリ、とモーキュネストには笑われてしまった。
「何も思い出せない……」
「それで構わないのよ、ユーリ」
いつの間にか湖に来ていた。美しい人が私の横にいた。
「私のことを忘れたのはショックだけれども……。神殿に戻ったらもう一度勉強をしなさい。そうすれば新しく記憶が紡いでいけるわ」
「……」
「あなたのいた世界なら大丈夫だから。もう来なくていいわ」
「……私がいた、世界? 」
「私の名前はスミレ。また夜に会いましょう」
湖に飛び込んだスミレは戻ってこなかった。どうなってるの?
小屋に戻り、モーキュネストに鳥籠について訪ねた。
「神の世界。神が造り上げた素晴らしい世界。湖で繋がっているの。ユーリ、私の正体を知ったとき眠り姫になる決意をしたのよ。だから、言えない」
「……ありがとう」
湖を通れるのは一部の者だけで、まだ神になってもいない私には無理だから飛び込まないでねと警告を受け、ベットに向かう。少し、横になろう。横になるだけならば。




