第九十三話 生け贄
放課後。私はいつもどおり、墓に向かった。両親の側にいたい。壊れた私を最期まで愛してくれた両親。
「あなた、瑞穂さん? 」
「……」
不思議な女性が現れた。──誰だろうか。クラスメートにこんなのはいないし……。
「一つ、聞きたいの。真田凛子さんのこと」
「……2年前のことですか。あまり話したくは」
「やっぱり……。あ、話して」
私は仕方なく重い口を開けた。
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真田凛子は美術部で私の後輩だった。いつも笑顔で明るかった。
なのに、彼女はある日いなくなった。先生に問いつめたが、無駄だと知り、私は彼女の親友に尋ねた。
「凛子は、その……事故に遭って、今治療中で」
「そうです。まだ他人には見せれないんです」
「それでも、私は部長です! 会いたいんです! 」
何とかあわせてもらったが、凛子はかろうじて人の形をしているレベルだった。後悔をした。私は壊れた。欠けた。
凛子が治りかけたある日、私の両親は死んだ。凛子はその後、奇跡的に回復した。まるで、両親を生け贄にしたかのように。
──凛子は結局、心の傷は治らなかった。
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「なるほどね。ありがとう、瑞穂さん」
「──あなたは何者なの、人の不幸を聞いて」
「理彩。それが私の名前。凛子さんの事故は私の仲間のせいだわ。ごめんなさい」
それだけ言い残し、理彩という女性はいなくなった。何だったのだろうか。
夜。私は睡眠薬を飲み、いつもどおり眠りにつこうとした。しかし、理彩という女性のことが気になる。
──どこかで会ったような気がしなくもないな。




