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chain  作者: 神崎美柚
戸惑い
92/143

第九十二話 違和感

「ユーリは記憶喪失みたいで……」

「重い代償だな」


 私ははぐれたユーリと再会したが、彼女は記憶喪失だった。時の管理者による代償なのだろうけど、それはつらい。

 楽園のソフィアに聞くと、時の管理者が握っているから取り戻すのは難しいという。


「結局のところ、何がしたかったのかしら」

「ユーリから記憶を抜き取りたかったのだろうな。戦争の時の記憶が染みついているユーリの記憶を」

「──そう。それならなぜ私は無事なわけ」

「見てきたものが違うからだろう。彼女には必要のないものばかり見てきたから」

「……」


 私はため息をつく。とりあえず寝かしておいたユーリを見ると、寝顔はいつもより安らかだった。


「桜高校からは退学したことになっているから探りにくい。しかし、透明になれば大丈夫だろう」

「まあ、そうね。あ、そういえば宮島家は? 」

「消えている。完璧に抹消されている」

「分かったわ。しばらく、ユーリを預かっておいてくれる? 状況を確認し終えたら引き取るから」

「ああ」


 桜高校に降り立ち、私は違和感を感じた。──防犯カメラがない。どういうこと?

 私は久しぶりに糸使いの力を発揮し、校内に侵入した。重たい空気など微塵も感じない、普通の高校になっていた。


「生徒会室……誰もいない!? 」


 今は授業中だ。誰かいたら普通はおかしいが、この高校は違う。なのに、誰もいない。


「生徒会の役職がきちんとしてる……ん、瑞穂? 」


 机の上にあった紙。生徒会メンバー表と書かれた紙には生徒会長・沙織、副会長・瑞穂、書記・カンナ、秋と殴り書きされていた。

 秋以外は知らない人だ。こんなに変わったなんて……。


「あれ、これは」

「私じゃない、私は知らない、私じゃない、私は知らない、私じゃない……」

「……? 」


 生徒会室の隅で怯えていたのは時の管理者だった。この状況は彼女が作り出したはずなのに。


「あの、この状況はあなたが」

「……! ──違うわ。私、ユーリの記憶抜いてただの女子高生にしただけよ。こんな世界作っていないわ」

「え……」

「恐らく、楽園の管理者が私が(ポーン)を弄っている途中に遊びだしたんだわ。あの人ならしかねない。ああ、どうすれば」


 そう言いながら消えた。──楽園の管理者。彼女が、滅茶苦茶に?

 そういえばと思い、私は真田凛子を捜すことにした。ここは誰が主体なのだろうか。


「美術室のあれは……」


 近づいてみると、間違いなく真田凛子。しかし──あの明るさがない。しかも、車いすを使用している。

 大分弄られている。この違和感に立ち向かえってわけ?

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