第九話 崩壊
あれから1週間後。中河原市が崩壊したらしい。スマホでニュースを軽く読み(芸能ニュースは見ないようにしてる)登校していた時のことだった。
それでみっちゃんは欠席か、と私は納得した。そのニュースではビル街が半壊し、宮島病院は焼失、宮島家のお屋敷もちょっと危なかったと書かれていた。
教室に着くと朱美だけがいた。他はまだ朝練か登校中かな。
「凛子、おはよう! 」
「おはよう、今朝の──」
「うん、見たよ。死者がかなり出たんだってね。大変だよね」
「にしては元気だね……」
「だって、それで委員長は転校取り消しになったんだから」
「取り消し? 」
「例え両親が生きていても、その高校がもうないのだから」
「うーん、嬉しいけど委員長の両親が亡くなっていたら複雑だなあ」
その時、シルディと帆乃水がやってきた。どうやら朝からバレーボール対決をしたらしい。
「シルディ、朝からバレーボール対決でしょ」
「うん、まあね。いや~帆乃水とは本当に互角に戦える」
「そうやね。もうすぐあるスポーツ大会……は中止やろうけど、うちはいつでも戦うで」
「何かあったの? 私、昨日は忙しくて……」
シルディはどうやらまた図書館にこもっていたらしい。まあ家がないから当然か。
「月9の放送中に緊急ニュースのテロップが出たで」
「『中河原市が先程崩壊しました。市長含む数十人死亡したとされていますが、被害は詳しく分かっていません』って」
「……そ、そうなんだ。中河原市って都会でしょ? 大丈夫なの? 」
「それがいくつかテレビ局が半壊してなあ、火曜ドラマがいくつか見れんで」
「……そっか」
委員長は結局欠席した。そりゃそうだよね。
授業は当然なく、アンケートを書かされた。いわゆるメンタル面を気にするアンケート。私は大丈夫だが、両親に説得され泣きながら登校した子もいるという。あの夏帆でさえ、泣いていた。
そして佐波条愛莉もなぜか来ていた。彼女は先生に説得されたっぽいけど。
「今日は先生たちは今後の対応を考えるための会議をするので、皆さんは自宅待機をしていてください。外には出てはいけませんからね~。バスを用意してますので、必ず乗るように」
「あの、中河原市にあったいくつかの高校の生徒はどうなるんでしょうか」
「もしかしたらこちらに流れてくるかもですね~。それではさよなら~」
先生がいなくなり、ざわつく教室。女子は自然と夏帆の元に集まっていた。
「夏帆、大丈夫? 」
「残っていたおじいちゃんの安否が分からないの、まだ連絡が警察からきてなくて……」
「ツラいよね、みっちゃんのお父さんとか委員長の両親も安否不明なんだって」
「それぐらいで騒ぐとか本当にお子さまじゃん、遙妃」
「はあ!? 夏帆のツラさが分かんないわけ!? 」
「んなの、知るわけないっしょ。あたしは大人しく帰るよ、お店はほとんど開いてないし~」
一気に空気が冷たくなった。互いに一年以上無視していたというのに、とうとう軽いケンカになった。
「夏帆、ごめんね、愛莉のことは無視していいから」
「うん、そだね」
「とりあえず早く帰ろうよ、犯人がうろうろしていたら怖いし」
「せやなあ」
男子は女子の前で泣きたくないのか、いつの間にかさっさといなくなっていた。(佐波条愛莉がいる教室にいたくなかった? )
「ほな、帰ろか。シルディは凛子の家にいた方がええで」
「分かった、そうするよ」
外に出ると、いつもの騒がしさはなく、カフェも休みになっていた。
バスは高校側が警察に特別にお願いして運行してもらうらしく、クラス別のバスに乗り込む。これはバス停から離れた家の生徒を危険な目にあわせたくないかららしい。
バスには本当に人が少なかった。まずは矢川市に住む生徒の家、次に鈴ヶ屋、最後に橋乃元という田舎に行く。ちなみに中河原市に住んでいた夏帆は矢川市に住むおじいちゃん(安否不明でない方)の家に。
「にしても、ほんまに少ないなあ」
「そりゃ、中河原市にはエリート校か私立しかないから流れてくるよ」
「せやなあ、うん……凛子は両親から連絡あったん? 」
「忙しいもん、連絡してくるわけないでしょ。お姉ちゃんも連ドラの撮影とか映画の撮影があるらしいし」
「やっぱりな。せやったらうちの家に来た方がええで。誰もおらへん家よりもうちの両親もおる家の方がええ! 」
「じゃ、そうしよっかシルディ」
「うん」
佐波条愛莉と有栖川宮遙妃は皮肉なことにも席が隣だった。なるべくそうはしたくなかったのだが、時間がないのだと運転手さんがせかし、こうなった。私やシルディ、帆乃水は一番後ろ。
「愛莉、いい加減似合わないことはやめれば? 正直、気持ち悪い」
「あんたには関係ないじゃん。もう親友でもないし」
「……そうだろうけど、見てて吐き気する。化粧してどうなるのよ」
「はあ!? マジ意味分かんないんですけど、裏切り者」
「何よ、このギャル女」
さっそく険悪な雰囲気に。最後の方までおりれない男子にとっては地獄絵図のような光景をずっと見ていなければ、というか聞いていなければならない
。
「愛莉はあの頃の黒髪の方が似合うよ」
「あんなのが可愛いと思ってるとかチョーダサいんですけど」
「もういい、寝る」
その瞬間、男子のため息が見事に重なった。




