第八十七話 鍵となるのは
私は翌朝、早速だが川上百合恵のお見舞いに訪れた。八千草先輩や島田先輩について聞いてみることにした。
「生徒会に所属しているからとあの人たちは悪いことばかりしてるの。瑞歌は八千草先輩にそそのかされたのか知らないけど、佐波条くんに私をよく会わせるの。私、このままじゃ体が持たないわ……」
「……なるほど」
「ありがとう、私の話聞いてくれて。先生じゃ頼りにならいからあなたを頼って頑張るわね」
「はい、ありがとうございました」
私は廊下に出ると、周りから見られぬようリーデルヒの力で家に戻る。今日はサボる。わざとあの二人の怒りの沸点をあげさせる。
「リーデルヒ、どうしようか」
「とりあえず八千草理恵が主犯ならば捜したら? 」
「追いかけるわ」
八千草理恵は島田瑞歌と共に大声で笑いながら歩いていた。生徒会の朝の集まりにはまだ余裕で間に合う。
「本当に惨殺するんですかー? 」
「そりゃあそうよ。あの女が佐波条一樹と仲良くしているなんてあり得ないでしょ」
「そうですよね」
心なしか、瑞歌の方が顔が楽しそうだった。これから殺人を考えているのに。普通なら理恵のように少し薄暗い顔をするのだが。
「リーデルヒ、まさかと思うけれど」
「瑞歌という女は腹黒だね、最低な女だね。ユーストリア並に最低だ」
「……やっぱり、そう思うのね」
「瑞歌は百合恵をわざと一樹に近づかせ、周りから見て『百合恵は一樹が好きで近々告白する』と思わせた。当然、理恵もそう勘違いをして悠希さんをからかった。理恵は理恵で二人が仲良くしているのならば惨殺するべきだと瑞歌に提案されるがままに……」
「きっとそんなところ。生徒会長が反対方向、しかも遠くから来ているのをいいことにこんなことを……」
そういえば島田瑞歌は生徒会する前はずっと演劇部だったと聞いた。だからこそ演技は上手なのだろうか。
「実行日は23日でもいいですか? 」
「ずいぶんと先ね、ま、いいけど」
「ウフフ……」
今が14日。あと9日。何をする気なのだろうか。
生徒会室。いつもなら早い私が来ていないことに笑顔でうなずきながら軽く舌打ちをする瑞歌。──そういえばこの日は。
「せっかくだし、3人でしか話せないことを話そうよ」
「理恵、いきなり何? 」
「佐波条一樹と川上百合恵の今後のこと」
「……私には関係ないじゃない」
「でもでも、生徒会長っ、私と百合恵は親友でぇ、ずっと悩み聞いてきたんですよぉ? 」
「ま、まあ私も一樹の幼なじみだから話し合い参加してもいいけど」
瑞歌のぶりっこ(演技)は完璧だ。生徒会長は瑞歌に対して信頼している。
「まず、百合恵はあのうじうじしたところどうかするべきなんだと思うんですよぉ」
「そうだね」
「一樹は……そうだなあうーん」
「あはは、思いつかないんですか」
「まあ、学年違うからね……」
ピリピリしている。この日は本来なら瑞歌が私にブチ切れ、生徒会長のメンタルが少し欠けた。
「なるほどね」
「ん、どうしたの」
「鍵なのは生徒会長のメンタル。私、あの時は事件に振り回されてかばえなかった。もしかしたらあの時、生徒会長は私に助けて欲しかったのかもしれない」
「じゃあ、生徒会長の護衛をユーリが、私は引き続き瑞歌の監視をするから」
「分かった」
予鈴が鳴り、私は生徒会長の護衛をするべくその場に残る。生徒会長は書類を見ながら少し寂しそうにしていた。
佐波条一樹が殺害された佐波条愛莉の兄だというのは分かっているが、瑞歌は何のために佐波条一樹を殺害したのだろうか。妹まで悲しませたかったのだろうか。
「一樹はあのことに怒ってるのかな……ごめんね、一樹……私が弱くて」
呟いた謎の言葉。どういう、こと。
「時の管理者、生徒会長の記憶見せなさい」
「私は、人間のはあまり詳しくないのだけれど……これかしら。5年前が限界だからね」
私はその中に飛び込んだ。




