第八話 過去
「遙ちゃんって佐波条さんとどうしてライバルなの? 」
「あー、その、小学校のとき近所に住んでいたわけなんだけど、もちろん小学校も一緒で。私はバスケを本格的にやりたくて、きちんとした設備もある中学校に行くことにしたんだけど……佐波条も同じ私立を別の目的で受けたわけ。制服が可愛くて中学デビューする気だったんだけど……」
「あらら」
「おかげで私も佐波条もピリピリしていて一触即発状態。去年は本当に苦労したなあ」
「なーるほど」
去年、佐波条愛莉は毎日登校していた。しかし、今はあまり来ていない。というか始業式以来来ていない。
「シルディも謎だなあ」
「……ごめんね、教えられない」
「……それじゃあ、これ、やる? 」
理彩が出してきたのは分厚い本。タイトルは『桜高校怪談話』。
「桜高校には七不思議、ないんだよね。数が多すぎてしかも不思議レベルじゃない」
「それ、怖すぎる! ボク嫌だ! 」
「じゃあこの機会に夏帆の怖がりなおそう? 」
「うう」
夏帆の異常な怖がり方に皆がクスクス笑っている中、シルディはなんとその本を読み始めた。私達、避けていたのに。
それには夏帆も目を丸くするばかり。まあシルディは悪魔だから存在自体あれだもん……。
「……確かに、すごい内容」
「ほらー! ボクもう帰りたいよぉ」
「そういえば夏帆はなんでそんなに怖がりなの? 私、バスケ部でよく夜遅くまでやるけど何にもないよ」
「うちもよお残ってるで」
「……お兄ちゃんがね、事件に巻き込まれたから」
「え」
夏帆はすごいつらそうなので深くは聞かなかった。
今が2025年なので、巻き込まれたとしたら──2020年に起きた猟奇的連続殺人事件。
「そうやったんやなあ、ほんまにすまんなあ」
「ううん、いいの」
「夏帆はお兄ちゃん大好きだもんね~」
「も、もう! やめてよ朱美」
「……それじゃあ、また今度にしようか」
いつの間にか20時になっていた。委員長の両親がいくら今日当直でもあまり遅すぎるとあとが大変だろう、とのことで解散となった。
私達は人も少ないバスの中でおしゃべりを続けることにした。
「で、委員長? 華道ってどういうこと」
「──お父さんのお母さん、つまりおばあちゃんのあとを継ぎたいの。お父さんは大反対だけどね」
「そうだったんだ」
「うち、初耳やで」
「内緒ごとはだめだよ~」
「皆に話したら絶対他の人、とくにお母さんに言うでしょ。お母さん同士仲いいんだからあえて黙っていたの」
「バレたら大目玉、やな」
そして、委員長はおばあちゃんのことを語り始めた。
「おばあちゃんはね、私にとってひいおばあちゃんにあたる人が病弱だったから高卒後すぐに華道を継いだの。結婚もして18でお父さんを生んで……。
でもお父さんはそんなおばあちゃんが嫌いだったらしいの。周りの親よりも若い母親なんて好きになれるはずがないっておばあちゃん言っていたけどね、お父さんは極端だった。実家から遠く離れた中河原市にある高校、そして医大に進学しておばあちゃんを無視した。
おじいちゃんは今でもそのこと怒ってるんだから家出に等しいよ。まあ、その医大でお母さんと出会って跡継ぎが欲しいために卒業後結婚して私が生まれたわけ」
「え、ちょっと待ってくれへん? 年齢の計算が混乱してきた」
「おばあちゃん、ずいぶんと若いねえ」
「……おばあちゃんが今60歳!? お父さんは42歳!? 」
「うちのおとんなんて57やで」
「私のお父さんは49だね」
「……私は知らないなあ」
委員長はまた何かを言おうとしたが、その前にバスが着いてしまった。
「じゃあ、またなあ♪明日続き話そうや」
「うん」
委員長は私達を置いて走って行ってしまった。な、何でかな。




