第七十七話 過去の因縁
「ここが、お父様の最後の地」
「そうよ。果敢にも挑んだの……。人間なのに糸使いだった男に。私はその男の名字をもらった。男はきちんと殺しておいたから」
「へえ」
広い庭にあった墓石。私とお姉様の父親、ケイン=ツゥベェルが眠っているらしい。
沢田明石──彼はお父様の仇。三大糸使いの一人だったらしい。お姉様は人間になるため、彼を使ったらしい。その代償に腕に傷を負ったみたいだけれど。
「リサテアは覚えていなかったの……沢田明石とは仲良しだったはずなのに……」
「……リサテア? 」
「アルキドゥの親友」
「……ああ。なるほど」
リサテアは元々三大糸使いの一人だった。沢田明石とも仲良しで、結婚手前まで行っていたと聞いたことがある。
「ルナリが蹴落とした。三大糸使いにふさわしくないと。そして──」
「ルッチェもいるからまた今度にしましょう、お姉さま」
ルッチェはきょとんとした顔でこちらを見ている。──お姉さまはルッチェについて覚えているのだろうか。
「そろそろ寝ます。おやすみなさい、師匠様、梨香さん」
ルッチェは沢田明石に両親を殺され、自分も殺されている。優秀な人間を体にしているだけの幽霊。
「はあ。しばらく、私は外に出ない方がいいかしら……」
「当たり前よ、お姉さま。あと忘れているふりの演技もしなくちゃ」
すると誰かがやってきた。──リサテア。
「あら、今頃はあの人間とかと一緒と思っていたのに」
「私の糸使いとしての腕と魔術の腕を忘れたの? 」
「──ふふ、あなたは何しに来たの。死にきたの? 」
「あなたはイリスの何? それだけ教えなさい」
「……あなた、記憶障害? それとも糸使いの頃の記憶を消したの? 」
「っ、その──」
リサテアはうずくまり、ごめんなさいと謝りだした。私達は見守ることしかできなかった。




