第七十六話 混乱
「ついでに言えばリィデは化け物になりました」
「……どこのバカがそんなことをしたんですか」
「さあ、分かりません」
ソフィアさんはううむ、と唸り何か本を取り出した。かなりボロボロの本。
「やはり、破られてる……」
「それは? 」
「楽園の記録帳だ」
「記録していたの? 感心ね」
私と理彩さんが覗き込むとかなり破られていた。しかも、丁寧に。
「姿は見たことないが、楽園の管理者がこれを管理していてな。全く、何なんだ……魂泥棒といい記録帳の破損……」
「そういえばソフィアさんはサナセイの事件と悪魔についてどれぐらい知ってるんですか? 」
「……大体、知ってる。亜希子という奴は悪魔だ。だが、まだ死んでいないから正体が分からない」
「死んでいたら分かるんですか!? 」
「ここは悪なる悪魔、つまり根源の悪魔が眠っている。だが、数人眠らず生き延びた」
「私やイリス。そしてハナはそれを受け継ぐ者。──シルディはよく分からないけれどね」
言っていることが難しい。どうせ消すからと色々喋ってくれているのだろう。
「まずはパトスを捕まえるべきかしら」
「よせ、あいつには護衛が」
「そう。でもやらなきゃ始まらないわ」
すると突然、生徒会長が出て行った。理彩さんも後に続く。
私やミーナさんも仕方なくついていき、しばらくすると変な建物が見えた。そこに誰かがいる。
「おや、君らは何をしに来たのだ」
「え、この人? 」
「嘘、でしょ、」
理彩さんと生徒会長が驚いている。私やミーナさんは首をかしげるばかり。
「ティクロノス……」
「死んだと思ったら大間違えだ。あの女が目覚めさせてくれた。哀れんでくれた」
「いや、確かに私はあなたの心臓を潰すティクトペアを──」
「心臓? それがどうした。このとおり生きている」
「……っ、まさか、いや、でも」
生徒会長は頭を抱え込む。理彩さんも混乱している様子。
「心臓再生はイリスの協力無しにはできないはず……つまり、イリスは」
「口封じされているものでな、しゃべれないんだ」
「……」
私とミーナさんはついていけないので見守ることにした。
「手始めにそこの伝説の剣士さんでも倒すか」
「ろくに剣術を習わなかったお前なんて──」
「ハッ、そんな過去もあったものだな」
ティクロノスさんは生徒会長のお腹を殴る。軽く吹っ飛び、建物の壁にぶつかる。
「お前が……そんな、強く、……」
「心臓を殴ってとめることだって出来るが、今回はやめておこう。そこのリサテアが爆弾を投げるだろうからな」
「……よく分からないけれど、捕まえた♪」
「ッ……!? 」
「ミーナ……」
ミーナさんは透き通った紅い糸で捕まえていた。ティクロノスさんは驚きを隠せない。
「私が誰なのか分からないでしょう? 私は糸使いよ。魔術師でもあるけれどネ☆」
「……これは困ったな。昔の奴らなら詳しいのだが、今のは……それに、ね、むく」
「ふふっ、寝たわ」
「「ミーナ、あなた糸使いだったの!? 」」
二人の驚きに対し、空気みたいになっていたディさんが答える。
「ミーナは三大糸使いの一人で、前紅の糸使いの娘ですよ」
「え、いたの? 」
「娘……だったんですか」
その混乱のさなか、私はミーナさんを見直してしまった。




