第六十七話 偽りの極悪人
「おい、リィデが見あたらないぞ」
「まだ戻ってませんよ」
「な、連れ戻せ! 今すぐ! 」
彼はずっと不機嫌。そうもリィデにこだわらなくてもいいのにね、バカみたい。
まあリィデはいい実験体になった。あの化け物から二度と元の麗しい姿には戻れないだろう。
「リィデは化け物になりましたよ」
「っ……」
「そうもこだわらなくても私ならリィデよりもっとお薬を作れますよ」
「……お前は人を愛したことがないだろ」
「はい? 人ならいつも心から愛してますよ。アハハ、バカですねパトスさん」
「お前な……」
はあ、とため息をつくパトス。極悪人らしからぬ行為。少し薬の量を増やさないとね。
「そういえば最近避けられるのだが、どうしてだろうな」
「あらあら、私のせいだと言いたげですね。フフ、違いますからね」
「……」
私は薬入りのコーヒーを彼に渡し、桜高校に向かった。
桜高校は私の期待通り荒れていた。そもそも人があまりいないので実質被害は教師たちにありそう。アハハ、楽しいわ。
「あなたは、誰」
「何、あんた」
「私はリサテア。この緊急事態に駆けつけただけ」
「へえ、あっち側なのね。問答無用で消えてもらおうかしら」
「あなたも善良軍団の……! 」
私はガスを投げつけ、その場を去った。サナセイという会社に昔作らせたすごく強力なガス。まあ、悪魔なら死なないでしょうけれど。
ガスが充満するよう、あちこちに置く。別に人間が死ななくてもいい。疑心暗鬼にさせればいいだけ。
「さて、帰りましょう」
帰ると、この善良軍団を抜けたいと訴えてきた哀れな豚がいたのでとびっきりの薬を渡してあげた。これでもうバカなことを言わなくなるでしょうね。
パトスの元に行くと、胸ぐらを掴まれた。あらあら、効果覿面。
「何しに出ていた」
「化け物のリィデを見に行っていたのです。ほら、あなたの指示で化け物にした」
「ああ、あの女か……」
「ついでにサナセイガスもまいたので人間の反応が楽しみですね」
「何本使った」
「そうですね……10本程です。しばらく近づけないでしょう、アハハ」
「ほう、さすがだな」
私は紅茶を飲む。そしてまた研究室にこもることにした。
「吉田孝徳の容態は素晴らしいですね、新薬の実験体として本当に相応しい」
「師匠様、遅いですよ」
「ごめんなさいね、パトスの薬の効き目が少し悪くてなおしていたりしたの」
「へえ、なるほど。改良を急ぎましょうね」
弟子のルッチェ。元サナセイの社員の中でも特に優秀だったからずっと、手元に置くことに決めた。
「さあ、研究を急ぎましょう」
ルッチェの声で研究を始めた。




