第六十三話 当主は誰だ?
朝、街に出た後自分のお屋敷に戻る前に本家、つまり私の実家でありお父様が住むお屋敷に立ち寄る。たまにはお見舞いもいいだろう。
「お父様、いらっしゃいますか」
「あら、お嬢様、お帰りなさいませ。お久しぶりですね」
「シェイナ、久しぶり」
「只今呼んでまいりますね」
しばらくすると、お父様が現れた。相変わらず車椅子に乗っている。
「ほら、応接間に行きましょうか」
「一体何の用だ、屋敷はやっただろう! まだ何かたりないのか!? 」
「いえ、その……お見舞いです」
「……すまない、怒鳴ってしまって。お前はお金などいらぬいい娘だったな」
「そんな、大丈夫です」
姉たちはお父様によくお金を要求するらしい。くたばるからいいでしょう? 、みたいな感じらしい。
お父様は急に私に何かを渡してきた。綺麗なエメラルドだ。
「妻の形見だ。イリス、お前がつけるのにふさわしいだろう」
「ありがとうございます、お父様」
お母様はお姉様の結婚を待たずに亡くなった。一番喜んでいたのに、孫の顔どころか自分の娘の結婚式にも参加できなかった。
いつもつけていたエメラルドのペンダント。これは当主の妻の証。まさか、私が新たな当主の妻に?
「長にはもう話してある。だから、安心するとよい」
「はい」
「さて、わしは少しゆっくりとすることにするよ」
「ええ、分かりました。また来ますね」
屋敷を出るとお姉様3人が待ちかまえていた。3人とも私を睨んでいる。
「イリス、それは何かしら」
「お母様のつけていたエメラルドに似ているわね」
「一体どういうことなの、末のくせに生意気よ」
私はペンダントを握りしめる。長に言ってあるのでその気になれば退けられる。
私は駆け出した。短いスカートでよかった……。
長の屋敷に入り、長に謁見する許可を貰う。
するとティクトペアと共に現れた。
「やあ、こんにちは」
「あの、長。なぜティクトペアを」
「君たちなら腐敗した一家を立ち直すことは可能だろう? 」
長は笑顔で告げた。私のお姉様たちのせいで腐敗したのだと周りから言われているらしい。申し訳ない。
「結婚の日はゆっくり考えてみるからな」
「はい、ありがとうございます」
外に出たとき、アルキドゥに遭遇した。虚ろな目でフラフラしていた。




