第五十三話 サプライズプレゼント
結局シルディには逃げられた。私達がとぼとぼハナのいる館に戻っているとイリスに遭遇した。やっと来たのね……。
「あ、まさか逃げられたのかしら」
「でも元仲間がのみこんだのだから仕方ないです」
「安心しなさい、ディが人間に協力してくれるさわ。さ、行きましょうか」
「はい」
全てイリスの計算どおりといった感じだった。一人では気まずいから私達と行く──成り行きでなるのが一番よい。だからあえて時間をずらしたのだろう。
「長、入りますよ」
「あ、どうぞ……」
アルロイド家の館、というか屋敷。私はここで彼女と楽しく過ごした。現在、ハナがここでサボ──休憩している。
入ってきた人物の中に見慣れない人を見つけてハナは首をかしげた。
「あの、あなたとあなたは……誰? 」
「伝説の剣士とか呼ばれているユーリ=フェギラスです」
「そして私はイリス──あなたの母親よ」
「おかあ、さん? 」
「そうよ。今まで逃げててごめんなさい」
「うう、そんなの、どうでもいいよ、お母さんっ……」
まるで幼い子供のようにイリスに抱きつきわんわん泣くハナ。とても、寂しかったのだろう。二度と会えない私よりは報われている。
「これが親子愛なの。分かった? シェントお姉さま」
「分からない」
「はあ~」
「さすが殺戮機械ね。それにしても懐かしい場所ね……」
リサテアはちょこんと座るスフィアを見る。スフィアは首をかしげる。
「シーナ……会いたいわ……」
「ユーリ、無理なこと言わないでよ。私まで泣けてきちゃう」
「シーナさんが人付き合いまで完璧だったとは知りませんでした」
まるで自分の母親ではないような他人行儀の口調。どこか怒ってもいた。
「シーナは亡くなるときに娘には具体的な遺言残さなかったからね……」
「私が怒っているのは彼女の遺品のことです。未だに片付かなくて……」
「遺品? 」
シーナが息をひきとった部屋はそのままにしてあるというので行ってみることにした。少し躊躇ったが、イリスとハナは色々話したいことがあるからと放置することにした。
「ほら、このがらくたの量。どうすればいいのか分からなくて。友人がまだ生きてるなんて初耳……」
「私はともかく、リサテアは一度も見舞わなかったですから」
「色々あったの。あの時は人に構っていたら自分が死ぬなんて当たり前のことだったし……」
「リサテア、がらくたじゃないわ。シーナが書き留めた手紙とか作ったオルゴール……。戦場の私達を想って……」
中にはハッピーバースデーと書かれたのもあった。数えてみるとリサテアが会わなくなってからシーナ自身が亡くなるまでのプレゼントが用意してあった。(私はシーナから直接受け取っていた)
「今更プレゼントだなんて……」
「リサテアさんはなぜ、シーナさんと会わなくなったのですか」
「このユーリのように強くなかったから。ユーリならこの屋敷で襲われても回避できるけど、私は当時無理だったの」
「……母はベッドから動けないほど弱くなっていたはずなのに悪魔にはあまり関係のない誕生日をわざわざ祝ってくれました。リサテアさんのお誕生日もきっと祝いたかったのでしょうね」
リサテアは誕生日プレゼントを抱え込む。ふと、目についたのがプレゼントでもない手紙。どうやらイリスに向けてのようだ。
「イリス宛? 」
「とりあえずイリスに届けましょうよ」
私達は階下に降りていった。




