第四十九話 旧友
私が放課後の学校にたどり着くと異様な雰囲気だった。ーーそりゃあ、そうだよね。もう16時なんだから。
「生徒会長、お帰りなさい」
「リサテア、ですね」
「……よくお分かりですね」
「あなたも私のことは知っているでしょう。伝説の剣士・ユーリだと」
「ああ、あなたね。今さら何をしに来たの? 」
「私だって学生ですから。それに生徒会長です」
「シルディは助けに行かないの? 」
私はうつむく。リィデに顔を知られていたら。もしも、そうならば。私は彼女にどう思われるだろうか。
私と会ったことがあるなんて忘れてくれただろうか。
「立ち話もあれだから、生徒会室にでも入りましょう」
「そうですね」
生徒会室に入ると、何かがおいてあった。飲み物だ。秋からのプレゼントかしら。
「改めましてお久しぶりです、リサテア。新たな悪魔を放ったと聞きました」
「ああ、ユンさんのことね。彼女は落ちぶれているから気にしないで」
「そう、分かりました」
外はどしゃ降りの雨。憂鬱な気分になりながらも、私は久しぶりに剣をリサテアに見せる。リサテアはへえ、と笑った。
「まだ捨てていなかったのね」
「当たり前でしょう。ほら、まだ綺麗ですよ」
「その剣、血に濡れたというのに随分と綺麗なのね。あなたが消えてから善良軍団ができて、あなたがそこに入ったのではとまで噂されていたんだけどまさか校内にいるとは。お得意の記憶操作かしら」
「毎日大変です。秋など関わった人以外の記憶から消さなくてはならないのですから」
「私は消すべきなの? 」
「リサテアはしなくてもいいと思いますけど」
リサテアは随分と変わった。あんなに短かった髪を長くしていて羽がなければ誰かはわからなかったかもしれない。
リサテアはハナの従姉妹にあたる。だが、かなり年齢は離れており長と一般悪魔という関係でしか接したことがないのだ。従姉妹として仲良くはできないのだとか。
「じゃあ、またね」
「リサテア、雨がまだ降っています。帰らない方がいいと思います」
「夜までやまないのよ。待っていたら怒られるよ」
旧友は昔のようにそうやって笑いながら言った。私の気持ちも少しほぐれる。
リサテアと笑いながら帰るのもいいかもしれないと思い、私も帰ることにした。
ふと、リサテアがペットボトルを手に取り中に何かを入れた。
「こんなに怪しい毒物、誰が用意したのかしら」
「ここは最新式セキュリティです。そんなの、二人と先生以外にいません」
「ユーリ、この高校はおかしすぎる。今すぐやめるべきなんじゃない? 」
「私はそれを正したいのです。後戻りが、できなくなる前に」
「……好きにすればいいわ。さ、ひとまず帰りましょう」
剣をおさめ、旧友と手を繋いで歩き出した。




