第四十八話 副理事長の怒り
私は途方に暮れ、フラフラと歩く。高校に行く気になれず、お店に入る。
「あれ、凛子? 」
「みっちゃん!? 」
「どうして、ここに」
みっちゃんが何といた。いや、今残っている桜高校の生徒は大半が欠席しているからおかしくはないけど。
みっちゃんの周りにはテニス部の1年生と思える子がいた。彼女たちは少し顔色が悪い。
「後輩の気分が優れないからショッピングしてるの。私も気分転換のつもりでね~」
「そうなんだ」
「あれ、凛子。シルディとは別行動なの? 」
「あ、うん。まあね」
「……よければショッピングついてきてよ。凛子もきっと気分が晴れるよ」
「う、うん」
幼なじみのみっちゃんには嘘がバレているのだろう。私はショッピングではっちゃけることにした。
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桜高校の現在の生徒数はたったの250人。本日の出席者は109人。特に欠席しているのは2年生。出席者は40人しかいない。
私はこの状況に怒っている副理事長をなだめるために職員室を訪れた。秋と共に。
「失礼します」
「いらっしゃい」
「副理事長、欠席者のことについてなのですが」
「私は怒りしか覚えないわ。この殺人は秘密にされているはずなのよ。まるであの時みたい……」
「あの時? 」
「な、なんでもないわ」
「……副理事長はあれの生き残りですよね」
「秋さん、それについてのお話なら別のところでしましょう」
私は秋の詮索癖に悩まされていた。秋はまさか、先生たちの過去まで知っているの?60人以上いる先生たちの?
副理事長とともに職員室のお隣の会議室に入る。
「あの桜高校恐怖の夜だけは思い出したくないの」
「……え? 」
「宮島先輩、副理事長は野球部の元マネージャーなんですよ」
「は、はい? 」
信じられなかった。あの凄惨な事件の生き残り。いるはずなんてない。生徒会長だって言っていた。
「この高校の先生は大概変わり者が採用されるそうですよ? 同性愛者だとかはたまた何かの事件の生き残とか」
「どうしてなの、秋」
「簡単ですよ。一般人より非科学的なものに対応できる人が多いからです」
「それじゃあ副理事長も」
「マネージャーは私と宮瀬先生と東雲高校の大高先生と歌手の杵島さん。この4人。宮瀬先生のことは同級生だから香ちゃんって呼んでいるけどね。あの日は辛かったわ。歌手の杵島照美が出身校を秘密にしているのもあの事件のせいなの。杵島照美先輩が野球好きだなんて知れているからますますバレる確率があるわけ」
「なるほど」
「この時も野球部の誰が亡くなったとまでは知らされなかったし、私たちも隠した。野球部の誰かが亡くなり、誰かが怪我をして、誰かが心を痛めたとしか報告はなかった。なのに――」
「今みたいな状況に陥った、と」
「それで先生たちから誰が話したのかと問い詰められちゃったのよ。疑心暗鬼になりながらも仲良しな私たち4人は話していないと口を揃えた。ネットもないような時代よ? でも、犯人はすぐわかった。おしゃべりで近所に住んでいた川島瑞穂が手紙をみんなに配っていた。今回もそうなんでしょう、だから怒りしか起こらないわけ」
皆にうわさが広まっているんだと理事長は知るやいなや倒れたためにあてにはならず、生徒会ぐらいしか頼れない。私は副理事長のサポートをするために授業は休むことにした。(生徒会長はしばらく休むだろうし)
「秋はモニター管理してくれる? 生徒会長、お休みするから」
「分かりました」
職員室に戻ると、忙しいはずの深月先生が寝ていた。スマホのトップ画面に見覚えのある人が写っていたのは気のせいということにしよう。
「先生、起きてください」
「ん、副理事長……って宮島さんまで!? あわわ」
「スマホはきちんと閉じましょう。その写真、見てるとイラつくから」
「すみません」
よく見ると3年生の女の先生との写真だ。あ、まさか。
私は副理事長の怒りが大分おさまったことにほっとした。




