第四十七話 伝説の剣士
私のせいで周りは死ぬことになった。その日から私は剣を置いた。力も使わなくなった。でも、今だけは。
隣に銀髪の魔女が現れた。彼女は口元に笑みを浮かべている。きっと、私が戻る気になって嬉しいのだろう。
「渋々に見えるんだけど」
「そりゃあそうですよ。この剣で周りは──」
「シルディを助けてからにしましょ。ほら、行くわよ」
私は剣を鞘になおし、飛び立つ。シルディは私がいなくなってから生まれた悪魔だ。しかし、母親であるリィデとは面識がある。──あいつのせいで。
完璧に荒れ果てた町となった中河原市。半壊したビルはテレビ局以外全て取り壊されたらしく寂しい雰囲気だった。
「この崩壊も──」
「あー、それはナトリとかがしたのよ」
「……」
「あら、悪かったかしら」
「別に他人がどうなろうが関係ありませんよ」
「あら、そう」
リィデは見当たらない。私は家に戻ることにした。
「へえ、独りなのに一軒家? 」
「別にいいじゃないですか」
「それで、これからどうするわけ? アジトにでも突っ込むの? 」
「……あなたに真実を教えてほしいの」
「……フフ、こんなことになった真実を? そうねえ、もうずっと戻ってないものね」
「そうよ。アジトって何? リィデはどういう立場なわけよ」
「──抗争のことから話そうかしら」
ソファに座り込み、話始めた。
────
抗争が起きたのはティクトペアの父・ヴェルティーが明確に跡継ぎを決めなかったからだった。そのため、ティクトペアの上の三人の兄は毎日騒いでいた。
私はリィデにその頃出会った。すぐにチャームの魔術を使う女だと分かったが、彼女自身制御出来ないとか思いもしなかった。
「なあ、イリス」
「どうしたの、ティクトペア」
「新しく来た女性は誰なんだ? ずいぶんと美しいが……」
「リィデという女性よ。いきなり何よ」
「いや、別に」
私の未来の婚約者はリィデに夢中だった。浮気しても構わない。とりあえず未来の長を生めればいい。
──狂いだしたのは、そのあとだった。
リィデは幼なじみ5人と善良軍団を作った。しばらく準備のため離れ、抗争もその間にティクトペアにより収まった。リィデとパトスは他人同士のように戻ってきた。
ティクトペアは私なんかどうでもよかったらしい。私は少し距離を置いた。伝説の剣士であるユーリアの噂を聞いたのもそのころだった。
ユーリアと共にハナと暮らした。おかしくなった ティクトペアはユーリアの剣を狙った。そして──周りの人は傷ついた。ユーリアは下に逃げた。
ティクトペアが亡くなるとハナが長になり、私も逃げた。私が疑われたのだ。
その約40年後。1980年代。善良軍団は桜高校で大量殺人をしたり、サナセイを利用したりと問題ばかり起こしていた。それをどうにか止めたのがハナである。シルディの目の前では大嘘をついていたようだった。
────
「一つ、足りないことがありますよ」
「え」
「リィデの目のことです。ガラス玉に変えたのはいつなんですか」
「……リィデは視力はいいはずよ。そんなことしたら」
私は自分の目をとる。銀髪の魔女・イリスはひいっとびっくりしている。私は万が一のことを考え、自分の目をガラス玉に加工した。あの、ホムンクルスをひたすら作る奴に頼み込んで。
「私は危険なことがあっても無事でいるために加工しました」
「目は、見えるの? 」
「視力はとてもよいですよ。ホムンクルスを作る奴に任せましたから」
「そうなんだ、へえ。じゃあまさかチャームって」
「パトスの野望を明かさなければなりませんね。でも、生徒会長ですから私は自由に動けないのです。あまり権力を使うと怒られます」
「いいわ。パトスとリィデ、その他幼なじみのことを調べておくわ。今からでも学校に行きなさいよ」
私は微笑んで頷いた。




