第四十四話 ハイデベア家
ホムンクルスの生成過程の見学を彼女は断らなかった。これから三姉妹がお世話になるのだからという気分なんだろう。
いや、二人だ。先ほどユンには別の使命を与えた。殺すことよりも偵察が得意だと考えたからだ。
「過去に遺体となった彼らを素材に使うのです。今回は男性ですから先々代の元当主を使いましょうかね」
「このホムンクルスは殺されたら同じようにまた素材に? 」
「二度目となると鮮度と落ちますし、ダメになってしまう。魂を抜いて人形にしていますよ。後で見ますか? 」
「お、お断りします」
人間と違い長生きする悪魔とは言えどもこの家は今回で352代目だ。つまり、351体もの人形が……。
「あら、でも私の全盛期にはそんな気味の悪い噂なんて聞きませんでした」
「造り始めたのは152代目のポルトから。というかあなた何歳なのですか」
「魔女なのですよ、私」
「知ってます」
彼女は再び嫌な音を響かせながらホムンクルスを造り上げていく。慣れた手つきだが、かなり気味が悪い。
「今回で200体目なんですね」
「そうですね。最初はやや抵抗があったけれどまあ慣れたものです」
「なぜ、そのポルトさんからそんなことを」
「彼は優柔不断というか、その、ね。周りが断ってしまったわけなんですよ。それで私は彼に母親を殺し、私に渡すよう提案しました。ポルトは素直でした。母親のホムンクルスと結婚できるなんてとても幸せだと笑顔で語ってました。今で言うマザコンです」
「う、気持ちが悪いです」
「まあ、あなたには理解できないでしょうね。……よし、と」
ほぼ完成したホムンクルスはそこそこ素敵な顔をしていた。すごい技術。
「これは先代当主の体を元に弟とかの内蔵を詰め込みました。次は男の子を生んでほしいものです」
「そうですか。見学させてもらってありがとうございます」
この家はなぜおかしくなってしまったのか。それが私の最終的調査目標であった。それは達成されたからあとは報告するのみ。
「ソフィア、ナトリ、ティクシャアーノ」
「遅いですよ。何で私を裏切り者と一緒に……」
「その言い方はやめなさいと言ったでしょ」
「だって、だって、」
「あの家に昔起きたことはまあ大体分かりましたよ」
その言葉に全員が驚いた。




