第四十話 希望
私は殺戮がバカバカしいものに思え、今は大人しく引きこもっている。それだけではない。先日、久しぶりに美術部顧問として潜入していた桜高校から連絡が来た。美術部は休部なんだとお知らせが来た。善良軍団が派手にやったせいらしい。
「ナトリ、何の用」
「やだ~、決まってるでしょ? 帰ってこないから心配なんだよ」
「私は──お休みしたいと何度も言ったわ」
「へえ。そう。それで、スフィアのお屋敷に……」
今、殺伐とした空気が広がっている。少し前に突然、長がやってきて泊まっている。しかし、それを許せないのがナトリ様である。同じ長として戻ってきてほしいと懇願している。
「スフィアも嫌にならないの? 」
「私はどうせここに1人だから別に……」
「──あなたもずいぶんと変わったわね、まあいいわ。いつまでも帰ってこないならもっと上のお方まで出てくることになるわよ」
「いるのかしら、そんな幻」
「もちろんよ、今は姿を隠しているけどね」
ナトリ様は紅茶のおかわりを要求してきた。この人はアルロイド家の紅茶がかなり好きなのだ。
キッチンで準備をしていると、応接間(ナトリ様と長がいるところ)から爆発音が聞こえた。あ、ま、まさか。
「どうしたのですか? 」
「頭にきた! あんたを勘当してやるっ! 」
「でも、別の種族のナトリに出来るの? 」
「今はそうやって呼び捨てだろうけど、私の方が先に長になってんだからね! ハイデベル様に訴えてやるんだから」
「──運命なら受け入れるわ。でも、ハイデベル様の判断次第かしらね」
「ハッ、知らないわよ、そんなこと。スフィア、紅茶の茶葉をちょうだい。あと、おかわり」
「今できました。はい、どうぞ」
「──ふう。それじゃあさよなら」
茶葉の袋を抱えて飛んでいった。茶葉、あとどれくらいかな。
「私、大丈夫かしら」
「いざとなればお姉さまが文句を言いに行くわ。だから、大丈夫」
「……希望は、あるのね」
長はずいぶんと弱っている。今すぐにでも誰か人間を殺さないといけない。しかも、ナトリ様も息巻いてギャアギャア言っていたものの息切れをしていた。紅茶もかなり飲んでいた。
「長、何があったんですか」
「──善良軍団が何かをしているのよ。おかげで私やナトリは瀕死よ……」
「それじゃあ」
「希望はあるわ」
にこりと長が微笑んだ。




