第四話 彼女の正体
「……彼女が人を避けて当然よ。宮島家に行くしかないわ」
「な、中河原だよ。大丈夫なの? 」
「あう、飛べないのは痛い……」
ここ矢川市の隣が中河原市。私の住む鈴ヶ屋市からだとバスから電車を乗り継ぐ方法しかない。
駅までバスに乗らなければならない、それを告げるとシルディは落ち込んだ。
「お金、ギリギリかも」
「貸すから」
「ありがとう、凛子」
駅は賑やか。そそくさと中河原市に向かう。
しかし、中河原市は閑散としていた。まだ17時だ。この時間なら中学生がいてもおかしくはない。
「凛子は知らないと思うけど、中河原市は今危険なんだよ。テロが起きたり、爆発したり。住民はほとんど避難してる」
「えと、それって」
「宮島家の仕業。悪魔だね」
「うわ、じゃあ歩くしかないじゃん」
「本当に困ったことだよ」
しばらく歩くと大きなお屋敷が見えてきた。その周りはやたらと被害が大きい。
「宮島家、ね」
「入ろうか」
足を踏み入れてみると、豪華な飾りがたくさんあった。かなり金持ちらしい。
すると、誰かが現れた。碧色の髪の女性。ここの主だろうか。
「あらあら、自ら狩られに来たの? フフッ、覚悟なさい」
「あなたは誰? 」
「宮島カノン──宮島家初代当主よ! 」
「なっ」
その後ろから黒髪の宮島香奈が現れた。嘘、どうして?
「私はあの子らの母なる者。私はずっと悪魔を狩っていたの。あの子らは茶髪だからぱっと見気づくのはクラスメートだけ。幸い、この周辺にはクラスメートはいないわ」
「な、な、」
私は全く理解が出来なかった。シルディはカノンと戦っているため聞こえていない。
「よいしょっと」
「!? 」
「こうやって細胞を引き抜けば私のクローンは生まれるわ」
気持ち悪いため、具体的な表現は避けるもののおぞましかった。なんと、淡い水色の髪の香奈が現れた。
それは私の腕を軽く切った。痛みから腕をおさえ、うずくまる。痛い、痛い。
「フフッ、カナの能力が恐ろしいなら帰りなさい。もうすぐあの子らも帰宅するわよ」
「仕方ない、早く行こう」
シルディは私を抱き上げ、外に運んでくれた。治癒魔法というゲームでよく見るものを施してもらい、私は心が軽くなった。
シルディは息を整え、微笑んだ。説明してくれるのかな。
「彼女のあとを追いかけてみたら案の定、お昼休みは人があまりいない地下で連絡をとっていた」
「え、地下? 」
「──まさか、彼女」
シルディが顔面蒼白になる。そして慌てて矢川市図書館に行こう、と言い出した。
よく分からなかったが、どうせ一人暮らしだし明日はお休み──とは言え東京行きの新幹線に夜乗らなければならないけど──暇だから構わなかった。彼女を一人にさせたら危なっかしい。
「矢川市図書館に何の用事なの? 」
「桜高校の歴史が知りたくて」
「そう」
私も知らないとにかく古い高校、桜高校。とにかく古い以外何も知らない。
駅から徒歩5分のところにある矢川市図書館。矢川市誕生記念に作られたらしい。
「あったよ、これこれ」
「『桜高校伝統史』か……ボロボロだね」
シルディがさっさと見つけた資料を読む。そこには色んな情報が。
中には、地下のことも書かれていた。
──矢川市が誕生した1980年、大都会中河原市に負けぬよう、学校で初の試みとなる地下階を作ることになった。しかし、その渦中で市長が亡くなったり、大洪水が起きたりと不穏なことばかり続いた。そのため、緊急時の避難用としてこぢんまりと作り終えたあとは鍵をかけ、その鍵を厳重に保管することとなった。
「悪魔、すごいんだね。鍵をこじ開けるなんて」
「いや、扉はもうないって」
そのさらに下。
──地下に男が忍び込み、事件が起きた2004年に扉は撤去された。
「嘘、でしょ」
「……私があとは調べておくから」
私がさっきから時計を気にしているのを見かねたのか、シルディはそう言った。本当に大丈夫かな……。
時間がないため、そのままの格好で新幹線に乗る。どうせお母さんは私に豪華すぎるホテルと服を用意しているんだろう。
数時間後、東京に着くと、どこぞやのホテルの人が迎えに来ていた。
「夕食の準備が出来ております。さあ、早く」
「ありがとうございます」
やっぱり豪華すぎるホテルだった。明日はどうなるのか、とても不安だ……。




