第三十八話 冷酷な魔女
私はわがままを言って、宮島家のように中立の立場となった。こうでもしないとティクシャーノとは話し合えないからだ。
姉が自分を見ていてくれないことに彼女はかなりショックのようだ。まあ、それは当たり前だが。
「中立の立場と言えばイリスさん、あなたもですよね」
「よく気づいた、と褒めるべきかしら」
「いえ結構です」
「ふふ、ティクシャーノもそうだったけれどどうやったの? 」
「勢力図です」
「……へえ、よく気づいたことね。それこそ褒めてあげるわ」
冷酷な彼女は私に紙を差し出した。すり替えられていた本物の勢力図だ。
「こんな昔の紙切れ、あなただって見覚えなんてないだろうに」
「おかしいと感じたのはハナの母親の部分が欠けていたことです」
「あなた、よく知ってるわね」
「『お母さんは魔女だけどすごく優しかった』『もう一度会ったら魔法を教えてもらいたい』……ハナはかなり喋ってました」
「おそろしい子ね。それでイリスという名前は? ティクシャーノは知らなかったわよ」
「魔女と言えばイリスですよ」
「──あなたも大分昔の悪魔なのね」
ハナの母親は自分の夫が亡くなると、夫の親戚による攻撃を避けるためか消えた。ハナは母親が大好きだった。
「まあ、よしとするわ」
「しかし、あなたは今何をしているのですか」
「リィデよ。魔女になった彼女を救いたいの」
「そうですか……。ところでシルディのことは」
「放置に決まってるわ」
冷めた目で彼女は言い放ち、楽園から出て行った。シルディに何かあるのだろうか。
次に私は旧友のマルトエ(ハナのメイド5号)を呼び出した。情報通なのだが、知っているのだろうか。
「シルディは確か、体に刻印があるんだよ」
「刻印? 」
「呪いの刻印。もう二度と解除はできないのだよ」
「……そうか。じゃあもう」
呪いの刻印──。ちやほやされていたリィデが突然絶望の淵に落とされたであろう刻印。なるほど、な。
「冷酷な魔女の複製──。よく言えたものだよ」
マルトエはククッと笑った。




