第三十四話 シルディとリィデ
「少し、昔のことを話してもいいかな」
悪魔のことはそもそも知っている2人は静かにうなずいた。
私も興味があったので静かに聞くことにした。
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私が生まれたのは、50年くらい前のこと。悪魔たちはあまり若手がいないから大騒ぎだったらしい。お母さんは周りからちやほやされたんだけど、その後だった。
お母さんは姿を消してティクシャアーノお姉さん──お母さんの妹がお世話してくれることになった。私は彼女がお世話好きでよくしてくれることから好きだったけど、でも、お母さんが必要だった。
お父さんであるパトスが亡くなったのはそのころだった。不慮の事故。何でもないことよとティクシャアーノお姉さんは笑っていた。もちろん私は泣いた。
そして大きくなった頃、私の元にお母さんが戻ってきた。すごくうれしかった。でも、分厚くてわけわからない本をくれて、消えた。
「きっといつか役に立つから」
「そうよ、シルディ」
二人の笑顔はあまり信じられなかった。私は独り立ちしても分厚い本は読めなかった。怖かったというか、信じられない。
私は他の悪魔とはあまり関われなくなった。母親のこともあったし、何より羽だった。私には羽がなかった。
ひとりぼっちでいた時急に母親は私にchainを断ち切るよう命じた。おかしいと思いながらも断れなかった──。
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「……つまり、シルディ先輩はまんまと騙されたんですね。殺人の口実に──」
「秋、殺意がわいてきたからって睡眠薬を開けないで」
「あんな魔女にこんなのは効かないですよね。ごめんなさい」
「あのさ、シルディ。ここに来てから──」
「凛子、私は楽しいよ。お母さんが敵でもね」
シルディは笑顔だった。
その後、話し合ったもののリィデと会う方法は思いつかなかった。だから、あの分厚い本を読むことにした。
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この本を誰かが読んでいる頃、我は死んでいるだろう。
我はリィデのことを愛おしく思っていた。抗争の中、出会ったバラだった。当時、結婚前ということもあり我は婚約者として迎えいれたかった。
だが、抗争が邪魔をした。兄らは父を殺そうとしている。仲間も徐々に力を持つ兄らに味方した。我は怒りのあまり、兄ら3人を殺した。仲間もついでに数人。
そんなときに父が死んだ。血色の長を受け継いだ我の側は男だらけだったが、抗争が終わったこともありリィデを呼んだ。彼女は相変わらず美しいバラだった。
だが──我は、彼女が魔女だということに当時気づけなかった。気づいたとき、既に我は精神的に衰弱し、体も思うように動かなくなっていた。我は大馬鹿者だ。
これを読んでいる人、魔女を止めてくれ
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ここまで読むとシルディは本を閉じ、静かに泣き始めた。




