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chain  作者: 神崎美柚
生徒会長
31/143

第三十一話 明かされる事件の概容

 翌日。朝から教室はしんみりとしていた。あの元気なトリオがいない。吉田は現在、気を落ち着かせるために警察病院にいるとのことだった。

 あとの二人は? なんて誰も聞けなかった。吉田が警察病院にいることから何らかの事件に巻き込まれたのだと皆は理解していた。


「でもさ、あの血の量からしてあとの二人はもう……」

「凛子、あかんで。今はお昼休みや。いくら廊下に誰もおらへんでも、これからカフェに向かうんやからな。テンション上げなあかんで~! 」

「帆乃水、無理に元気出そうとしてるね~」

「ちょ、みっちゃん」

「う、うちは落ち込んでないで」

「──ところで、春香は」


 シルディの声に反応して振り向く。確か、調べ物するとか言っていたなあ。


「今日は少し用があるんだって。カフェ自慢のオムライス、楽しみだね」

「うん」


 生徒が激減したせいか、カフェにはあまり生徒がいなかった。近隣の高校からの編入生もあまりいない。

 私はオムライスとパフェサンデー、みっちゃんはオムライスとチーズケーキ、帆乃水はたこ焼きと鯛焼き、シルディはオムライスとティラミスを頼んだ。飲み物まで頼むと値段がハンパないのでやめておくことにした。


「──帆乃水は刀根(とね)くんが好きだったんだよ」


 唐突に、恋バナが始まった。いつも吉田とバカ騒ぎをして怒られている刀根、相田。刀根のどこがカッコイいのだろうか。


「も、もうっ! みっちゃんってば」

「あんなやつカッコイいわけないじゃん」

「私、転校してきて間もないけど同意見」

「……刀根は地域のイベントですっごく優しく子供に接していた。いつか恵まれない子供たちを支援したいとか話してて、いいやつじゃんって」

「へえ、刀根が」


 珍しく標準語に戻った帆乃水。純粋だなあ。

 オムライスはとても美味しく、悲しいことを忘れさせてくれた。


 放課後。シルディと共に帰ろうとしたら、4組の華さんがやってきた。どうしたのだろうか。


「吉田君のお見舞い、クラスメートという接点以外だと断られやすいから一緒に行きたいの、真田」

「あ、うん」


 シルディはあまり好きではなさそうだったが、吉田のお見舞いには行ってみたかったからちょうど良かった。

 幼なじみで小さい頃から私やみっちゃんたちと遊んできた吉田。最近はあまり好きではないけど、昔は仲良く遊んでた。

 矢川警察病院──橋乃元寄りで、最寄りのバス停から少し時間がかかった。事件の被害者などが入院するため、静かなところにあるのだろう。


「吉田孝徳のクラスメートで幼なじみの真田凛子です、お見舞いにきました」

「その友達のシルディです」

「友達の椎田華です」

「はい、案内しますね」


 病室の吉田は顔色がまだ悪かった。すかさず、華が近寄る。


「これは、まさか……」

「毒性の強いガスの中にいたと本人は証言しているのですが、よく分からないんですよね。それでは受付にいますので、また」

「華さんには心当たりある? 」

「サナセイ株式会社の地下倉庫から見つかった微量の毒性の強いガス。通称・サナセイガスというものなんだけれど、すぐには死なない。苦しいって喉を自分で裂いていく。そして、完璧に裂けたところで毒が全身に回り死亡。失血死も同時に起きてるとか」

「そんなものが」

「恐らく犯人は、宮島香奈とその母親を殺害した人と同一人物。しかもサナセイの元社員」

「っ、お母さん、かも」

「シルディさん? 」


 華さんは苦しそうにするシルディを支える。私は、吉田の側にある椅子に座る。


「ああ……りん、こ」

「昨日、血まみれだったけど何があったの? 」

「……びじんなひとから、おれだけ、じょーざいもらって、それで、そのあと、」


 吉田曰く、トリオはよりにもよって部室でゲーム大会をする気だったらしい。しかし防犯カメラに撮られては違反が見つかる。そのため防犯カメラに細工をした。録画を流すように──。協力者は3年の理系の先輩らしい。その時悲劇は起きた。

男の人が何か固まりを投げてきた。そこからガスが吹き出てきた。窓を開けようにも開かない。目の前で刀根と相田が苦しい、苦しいと言いながら喉を裂いていく。

先輩たちの助けを呼びたくても、目の前で友人が死んでいくのに耐えれなくなった。ガスがおさまると、自分は血まみれになり二人は死んでいた。そして、ドアは開いた。吉田はとにかく歩いた。雨が血をながしてくれたら、と。


「つまり西尾さん、あなたは校則違反をしようとしたわけですよね? まずは謝ってください」


 生徒会長が坊主頭の先輩を廊下で怒っていた。その先輩はか細い声ですみません、と謝った。


「あ、にしおせんぱい……」

「吉田、すまんな、俺が協力したせいで。俺の家ですればよかった」

「いえ、あやまるのは、おれじゃなくてぇ」

「あ、うん……」


 呂律の回らない吉田は西尾先輩(防犯カメラに細工した人? )に怒っているようだった。西尾先輩は泣きながら亡くなった二人に対して謝っていた。

 生徒会長は私の隣のイスに座る。サナセイガスについて、と書かれている資料を持っている。


「吉田さんが共犯者の女性から貰った錠剤。簡単に言えば死ぬのを避ける効果しかありません。重い後遺症が残ります」

「たとえば……この、ろれ、つ、」

「ええ、そうです。走るのも無理です」

「つまり、やきうも」

「サナセイガスは、90年代に様々な事件を起こしました。犯人は行方不明。どこの誰なのかも分かりません。吉田さん、あなたは筆談で生きていくべきです。声を出す部分も危ないことになってると思いますから」

「……」


 吉田は、涙を流した。つまり復学も難しいと遠回しに言っているようなものだった。


「西尾さん、あなたには責任をとってもらいます。ほかに協力した野球部部員と共に1週間謹慎処分です」

「はい、すみませんでした」


 私はシルディと共にさっさと帰宅することにした。

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