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chain  作者: 神崎美柚
生徒会長
30/143

第三十話 第三の殺人

 体育館の教官室で柚月先生はこのゴールデンウイークに起こったことを話してくれた。コーヒーを出してくれた。美味しいし、心が温まる。


「ゴールデンウイークに学校の先生は校長以外は当番制で来ることになっていたの。そしたら学校を転校するという主旨の電話が凄かったわけ。ほとんどが2年生で──帆乃水たちの学年よ。だから主要戦力がいなくなっちゃって。負けるようになったら、周りから何と言われるか分かる?凛子ちゃん」

「──あの高校はおかしい」

「そう。笑われてしまう可能性があるのよ。私なら名が通ってるから戦略と思われるだろうけど、ハンドボール部とかは何でそんなに弱い奴を選ぶんだって言われてしまう。テニス部は耐える気満々みたいだけど」


 うふふ、と笑う柚月先生。バレー部はなぜ、帆乃水がいるのに休部に……。


「ちなみにここは自主的に退部する子だらけで人数不足」

「そうそう。うちは何人も止めたで。でも、やっぱり怖いんやろな」

「失礼します」


 みっちゃんがやってきた。雨に濡れていた。


「あ、二人とも。捜したんだよ。早く帰らないと怒られちゃう」

「私が責任をとるから、さっさと帰りなさい。明日からはきちんとすぐに帰ること」

「はい」


 教官室から出ると、悲鳴が聞こえた。敷地が広い桜高校。どこからなのか分からない。


「不吉だね、早く帰らないと……」

「ほんまやな」


 大雨なので傘を借りることにした。これは大変だ。

 ざあざあ、ぺたぺた。


 ざあざあ、ぺたぺた。


 ざあざあ、ぺたぺた。


 何か変な音が聞こえた。振り返ると──吉田が血まみれで歩いていた。


「よ、吉田? 」

「──」

「とりあえず職員室、いや保健室に……」


 吉田を保健室に送り、私達は大急ぎで帰宅した。──悲惨な事実から、目を背けるように。


 帆乃水の家に戻るとリィデさんはいなくなっていた。恐らく、ここがとてつもなく不便だと感じたのだろう。


「あ、シルディ……」

「お父さんとお母さんが信じられない。このタイミングでいなくなるなんて」

「ほんまやなあ」

「ん~? 」


 何も知らないみっちゃんは首をかしげていた。

 夕食時になっても戻らないリィデさん。彼女はもしかしたら敵なのかもしれない。


「お母さんのこと、どれぐらい知ってるの? 」

「あまり昔のことは話してくれない。本を見て学びなさいって」

「教育ほーき? 」

「みっちゃん、それ言うなら育児放棄やで」

「どっちも正解」


 唐揚げをほおばりながら、シルディは幼い頃のことを話してくれた。

 面倒見のよくない母親、リィデ。あまり記憶にない死んだ父親。母親は自分が小さい頃からあちこち動き回っていた(恐らく人間のことを調査していたんだろう)ため、食事は知り合いの人がいつも用意してくれてた。大きくなってきて、自分で食事がとれるようになる頃に母親は一度戻ってきた。謝った後、ぶ厚い本をくれた。そして、また消えた。

 私の母親とよく似ていた。


「本当にイライラするんだよね。全然帰ってこないんだから」

「まるで私じゃん」

「──そうだね。明日連絡してみる」


 夜。星空がきれいなので、屋上(帆乃水の家には屋上が存在する! )で眺めることにした。シルディと内緒の話、いわゆる悪魔の話をするのだ。


「橋乃元にいるときにお母さん、薬品会社に勤めていたんだよ」

「サナセイは薬品会社だからね。──黒い噂ばかりだけど」

「どういう、こと? 」

「人殺し薬品の製造とか、一部の社員がしていたらしいの。まあもう40年くらいたつから真実はわからないんだけど」


 そこでシルディは顔を青ざめた。どうしたのだろうか。


「もしそれに関与していたのなら、水酸化ナトリウムなんて容易く手に入る──」

「あ……」


 かえって気落ちさせてしまった。ああ、どうしよう。


────


 宮島家の処分が完了した。手駒としてこっそり動かしていたものの、あいつらに負けた。それにシルディを仲間にとりいれなかった。

 ──ペンダントをどこかで落としたらしい。早く、探さないとな。

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