第二十二話 思い出
1984年4月
3日
今日から一族の長であるハナ様の護衛担当になることにした。これも妹を守るため。私は女をすてなければならない。とても大変だろうけれど、落ち着けば大丈夫だわ、きっと慣れる。
4日
ハナ様はご自身のことを気軽にハナと呼んでも構わないと笑顔で言ってくださった。とてもありがたい。就任2日目でここまで進歩するとは。
5日
今日は妹とハナで遊んだ。とても微笑ましく、私はつい笑顔になってしまった。いつ襲われるか分からないのに。このままでは失格だ。気をつけよう。
6日
紅茶をこぼしてしまった。ハナ、ごめんなさい。
7日
昨日のこともあり、怯えていたがハナは許してくれた。とても心が広く、ますます好きになった。
8日
男っぽい格好も、言葉遣いも慣れた。あとは髪だが……ハナがそのままで構わないと言うので軽く結ぶだけにする。長いと邪魔だが、これがなくなれば私はもう乙女ではなくなる。
9日
妹が高熱で倒れたと聞いたが、ハナには言えなかった。ごめんな、妹。スフィア、あとで行くよ。
10日
妹と離れて暮らすことにした。妹は下でアルロイド家末裔として生きてもらいたい。私のことは忘れて欲しい。
(中略)
同年7月
25日
今日はハナが人を食べた。残忍とは思わなかった。当たり前だ。善良軍団の事後処理が楽しみだ。
26日
死体を持ってくるとは随分滑稽な手段だ。呆れてしまう。
27日
全ての根元であるchainが楽園に封じ込まれた。私はこれを管理するため、ハナの前から消えることにした。後悔はしている、ごめん、ハナ。
28日
誰かに呼ばれて私は体を置いて向かうことにした。ひ弱な女性だった。名前は、杏。しばらくは彼女のナイトでもしてあげたいと考えている。
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私はつらくなると、彼女の体の側から持ってきた日記を読む。彼女を壊したのは私だ。私のわがままで彼女は騎士でありつづけなければならないと思いこみ、あの魅力的な笑顔も見せなくなった。
長がこんな調子ではいけない。早く元に戻らないと。
「長、面白いものをもってきました」
「あら、それは」
「何でしょうかね? 紙ですが」
「っ! それ、まさか! 」
制止しようとする部下からひったくり、私は読む。──間違いない、これは彼女の日記。
「長ぁ~、そんなの捨てましょうよ」
「ダメよ。私が大事に保管するわ」
「……まさか、あの騎士野郎が生きてるとでも? 冗談はやめてくださいよ」
「冗談じゃないわ、本当よ! あなたは早く出て行きなさい」
「はいはい」
どうやら最近のものらしい。日記、書き続けていたのね。
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4月某日
今日、ようやく杏から解放された。だが、私はもう死んだことになっているのだ。会うわけにはいかない。こっそりと動こう。
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これだけ読み、私は宝物入れになおした。鍵を厳重にかけ、屋敷を飛び出す。chainのある楽園へと急いだ。
久々に来た楽園は相変わらず美しいところだった。そして、目的の人物を見つけた。




