第十九話 救出
シーナは好奇心旺盛だ。私はそれをとてもいいことだと思っているが、余計なことを考え過ぎなのだ。
あれから私は様子見を続けた。シーナはミーナに任せ、私はいつ救出すべきかを見守った。
『「おや、あれは」』
私は桜高校の屋上──非常に眺めがよい──に立っているとドア越しにシルディがやってくるのが見えた。気配丸出しとは悪魔失格だな。
「こわくない? 」
「うん。悪魔は好きだよ、憧れていた」
「……そっか、よかった。じゃあ、私があなたのパートナーになってもいいんだね」
「うん。いいよ。凛子って呼んで」
「私のこともシルディって呼んで構わないからね、凛子」
つまらない友情劇。ふん、くだらない。
そこに宮島香奈の偽物、もとい使い魔と気配を消している(私にはバレバレ)パートナーが現れた。このパートナーは確かハイデベル様の元を離脱したバカだな。名前は忘れた。
「宮島さん、まさかそれ──」
「そうよ、これはあの悪魔の描いた絵。こんなの破いてしまおうかしら」
「凛子、この子、悪魔のパートナーがいるよ」
「え、宮島さんが!? 」
「その声はシルディかな」
「誰、なの。私来たばかりで」
「私の名前なら明かさないわ。まあせいぜい頑張りなさい」
「お母様の言いつけ通りあなたを──殺す」
「え、ちょ」
「帰りましょう。お母様からあいつを捕らえたと報告が来たわ」
「分かったわ。じゃあね」
私はこれから救出しようと考えた。そろそろ救出する頃合いだろう。使い魔達に報告した、ということはマズいかもしれない。
中河原市の宮島家。私は侵入し、解放を試みる。
「『さあ、早く』」
「……ハイデベル様の仲間かしら。ありがとう」
「『詳しい説明をいたしますので、こちらに』」
やはり騎士としての本能がはたらく。彼女をいわゆるお姫様抱っこで抱え、大急ぎで地下からでる。
「あなたって多重人格なの? 」
「『……よくご存じで』」
私ならどうにかできる──そう口が動いた気がしたが、その前にハイデベル様の元にたどり着いた。シーナが人間だったころ働いていた(誘拐事件とか起こし始めてからはもっぱらミーナだったが)会社があった廃ビル。ハイデベル様は長であるハナと共にいた。
「あら、スフィア。無事なのね」
「はい、無事ですよ。ハナ様」
「わらわも心配じゃった」
「ハイデベル様、お気遣いありがとうございます」
「この後はどうしましょうか」
「──そうね、宮島家を追いつめましょ。中河原市をドカーン! とか。まあその前に全員集まる必要があるけど」
「リサテアとか? 」
「そうよ。フフッ、明日集合しましょう」
私はわざわざ声を変えた。ハナにはバレたら困る。私がこのシーナの中にいることが、知れたら──。
廃ビルから離れ、スフィアの家がある橋乃元の郊外へ。スフィアは屋敷にいれてくれた。
「どうせ外で暮らしてるんでしょう、」
そして私の本当の名を彼女は言った。私は──。
「──ソフィア」
「『なぜ、分かった』」
「ハナ様の前で声と態度を変えていたからよ。私は忘れていないから」
観念して、私はシーナの姿からソフィアである私の姿になる。目の前のスフィアと同じ水色の髪。
そう、私は──スフィアの姉でハナの護衛担当だった。なのに、あれ以来私はシーナの元に引きこもっている。
「ハナ様、寂しがってるわよ。私の頼れる騎士がいなくなった、って」
『それであんなに変わったのか』
「──まあ、それよりあなたは戻りたくないわけ? 」
いつものあの紅茶を貰う。懐かしいソファに座る。
『chainをほどこうとするバカがいる限り無理』
「あー、善良軍団? まあどうにかなるわよ」
『……明日の集合にはシーナではなくミーナを行かせる。シーナには眠っていてもらう。それと、お前にこれが解決できるのか? シーナの体はもう消滅したんだぞ』
「もちろん、よりしろが必要になるけど、善良軍団の誰かを殺してシーナをいれたらいいのよ」
『なるほどな 』
「それじゃあ、また明日」
スフィアにはツライ想いをさせるが、私は──最後まで貫き通す。




