第十八話 多重人格
ハイデベル様に呼び出された。そこは──あの、廃ビルだった。私にとってはあの人と最悪の別れ方をした場所。
『苦しかったら言ってくれ』
《私達がついてるからね》
「分かってる、分かってるよ……」
ハイデベル様は制服を着ていた。あの事件があった桜高校の制服だ。
「わらわが管理しているアルロイド家の末裔がはぐれ者の宮島家にさらわれた。救ってくれぬか? 」
「い『もちろんです』」
「お主ならそう返事してくれるじゃろうと期待しておったが、予想どおりで安心した。これがわらわの住所じゃ」
「……ありがとうございます」
リーナはいつも私のうじうじしているところを後押し、どころか前にでてくる。彼女は私には出来ないことをする。
ハイデベル様と別れ、私は今住んでいる中河原市に戻る。長もそこにいるのだ。
「大変だわ、私が消えたことによってリィデたち善良軍団が動き出したわ」
「長……大丈夫なのでしょうか」
「安心なさい。私と彼女では差がありすぎてる。前もそうだったこと、覚えてるでしょう」
「──『そういえば』《そうでしたね》」
「フフッ、しばらくは中河原市の爆発を続けて宮島家に目を向けさせましょう」
「はい」
多重人格──それで一番困るのは記憶の共有。私にはあの人とともに過ごした記憶はほとんど存在しない。長があの人と戦ったとは初耳だ。
私は長から離れ、自分の部屋でベッドに寝転がり、二人と会話をする。
「どういうことなの? 説明して」
『お前が逆らったから気絶させ、ミーナを特別に表に出した』
《演技の難しさを思い知ったよ》
「……私、詳しく知りたい」
『今は救出が先だ』
《その後ゆっくり話してあげるね》
二人はそれから黙り込んだ。最悪だ。まさかミーナにでさえ……。
《私はね、シーナの味方だよ。リーナが一番強いんだから仕方ないでしょ》
「……そうかもね」
私は夜の記憶がない。リーナが表に出過ぎているから。私はそれが嫌なのだ。
早く二人を独立させたい。
──意識が、途切れた。




