第十五話 あの時の裏切り
翌日、朝早くに起きると既にリィデさんは起きていた。早すぎる。
「あら、おはよう。人間は遅いのね」
「まだ7時ですよ……これでも早起きなんですから」
「シルディにその辺を偵察させてるのだけれど、人間はどういう生活をしているのかしら。私の元パートナーは徹夜しても平気だったからよく知らないの」
「帆乃水の家は大体7時30分ですかね。お父さんはお休みが多いお仕事でお母さんは近くの表通りで和服屋を経営してるのでかなり家にいます。──私の家とは大違いです」
「へえ。人間にますます興味がわいたけれど我慢、我慢。それじゃあ少し待ったら起きてくるのね」
「ええ、お客さんもいますし」
リビングでココアを飲んでいると帆乃水たちが起きてきた。ドタバタと朝からうるさい。
「あ、おはようございます」
「今日はおとんのスペシャル朝食やで」
「真一さん、卵は古いのから使ってくださはれ」
「……騒がしくて、落ち着くわ」
リィデさんはにこやかに見つめている。彼女は私と同類なのかもしれない。
朝食をすませ、帆乃水はバレーボールの練習に、両親は仕事に行った。私達は橋乃元に向かう。
「お母さん、事件以外に何を捜してるの? 落ち着きないけどさ」
「──昔のパートナーよ。私は後悔してるわ。でも、あなたは気にしなくていいのよ」
事件現場に向かう途中、リィデさんは昨日のあの悲しそうな顔をして話していた。シルディはリィデさんの微妙な感情変化は分からないらしい。
廃ビルでは警察が捜査をし、マスコミがうろうろしていた。リィデさんの能力で中に入る。
「──! 」
「リィデさん? 」
中に入るなり、リィデさんは立ち止まってしまった。シルディは首をかしげた。
「警察たちの会話が聞こえたのだけれど、まさか、そんなはずは──」
「どうしたの? お母さん」
「凶器は見つからない、とても鋭利な物で切られているのに──」
「んと、昨日の悪魔はそんな殺し方しないの? 」
「仲間がいると言っていたじゃないの。ほら、その……ね」
そして、廃ビルの二階にあがる。私たちもついてく。
かつてオフィスがあったであろうその場所は血とか染みついていた。
「ここはかつて私のパートナーだった女性が働いていた場所よ。出会ったときにおかしいと気づけばよかった」
「──連続失踪事件」
シルディは静かに呟いた。私はよく知らない。
「あの桜高校の事件と同じというかその後に起きた事件。86年、次々とサナセイの関係者が失踪したの。それが影響して翌年の2月に倒産。社長は自暴自棄になり、家族から離れた。この会社の2階に閉じこもった。そしてそのあと死亡、だよね」
「──警察が家族の心配からここを強制捜査する前、私はパートナーに裏切られた。彼女はあんな悪魔の味方になり、私は、私は──」
「……お母さん、羽がなくなったのもその時なんだよね」
「そうよ。人間のものとは思えない鋭利な爪で綺麗に根元から」
「ここで……か」
恐らく、激しいバトルがあったのだろう。壁や床は少しへこんでいた。
「あの時の裏切りを──後悔させてやるわ! 」
リィデさんは高らかに宣言した。




