16 能力を極めし者
立ち去るとき、リサテアにジロジロと見られた気がして焦った。師匠は関係者のデータをくれたが、一番データがなかったのがリサテアだった。
理由としては、戦争の渦中を生き抜いたから、とか糸使いとして悪魔たちから離れていたから、というのを聞かされた。もちろん、本物のルマントとも会話は交わしたことがない(師匠調べ)とのことで、会わないようにとまで言われた。
「本当にマズいな……あのお方を連れ戻す前に追い出されたら師匠に怒られちゃう……」
人気のない本館をフラフラ歩く。ロドノスとイリスはどこに行ったのだろうか。
「無機物よ、従え」
その声と共に現れたのは、銀髪の女性。
壁にかけられていた絵画が私に向かってくる。よし、燃やそう。
「まあ、魔法使い……。それもかなり高度なのね。──従え」
今度は落ちていたガラスの破片が向かってくる。うわあ、危ない。私は炎で応戦する。
「面白い子。この私と戦うなんて……」
「……! 」
風が吹く。スカートが揺れ、脚が少し見えた。──何、あれ。
「あら、気づいたのね。私が誰なのか」
「……」
師匠から散々言われていた。学生の頃も習った。──能力を持つ者と魔法使いは反りが合わない。故に、戦いも無駄である。
「誰か来るわ。じゃあね」
彼女は消えた。──彼女の脚にはあざがあった。それも、綺麗な空色の。
「ルマント、いたのか」
「う、うん。気になって……」
「そうか。ルマントもこの状況についてよく知らないのか……」
本当はこの凄惨な状況が全て魔法のせいだと言いたかった。でも、私がルマントではないとバレることになる。
「ほのお、もえてるー」
「まあ、本当」
「これは……」
マズい。魔法の痕跡を残すとは、何たることだ。師匠に殺されそう。
しかし、3人とも気づかない様子。安心、安心。
「モーキュネストに行くとしよう。マリアにも話を聞いてみないとな。ルマントも行くか? 」
「……」
──能力を持つ者はモーキュネストにいるらしいの。近づくのは危険よ。誘われたら断りなさい。
脳裏に師匠の言葉が。ここは、断ろう。
「私は、ここにいる。もし、ここにお兄さまが戻ってきたとき壊されたら困るから」
「じゃあ、行くとしよう」
またリサテアが私を見てきた。先ほどよりも、数倍睨みが増しているような……。
私はとりあえず、先ほどの女性のことを思い出す。無機物に魂を入れる能力者。ヴィアマンド。師匠が危険と見なす能力者の一人。包帯を巻かないと力が溢れ出るという一般的な能力者の上をいく能力者。
「にしてもあざ、か……」
しばらくぼんやりするのもいいかもしれない。




