第百二十五話 エピローグ ソフィア編
──私は無事に生きていた。目を覚ますと、青い空が広がっていた。
シルディは側にいなかった。私を赤穂の家の側に置いていったのか。
「目を覚ました? 」
「赤穂、なぜ放置した」
「終わったことを実感させたくて。あれから1週間も眠っていたんだから。あ、そうそう。イリスは倒れていたところを捕まえたから」
「……」
「ほら、起きたのなら行って。私よりも大事なことがあるでしょう」
私は喉に手を当てる。包帯が巻かれていた。特殊なものだ。モーキュネストのシスターが手当てを……。
私は一番大事な人に会いに行くことにした。──ハナ。全てが終わった。だから……。
屋敷に着き、出迎えたのはスフィアだった。穏やかな顔をしている。
「お姉様、お帰りなさい」
「ああ……ハナは」
「あ、うん……そこにいるよ」
屋敷のリビング。窓の外を眺める車いすの少女。髪の毛はパサパサ。全体的に儚げで、今にも消えそうだ。
──ハナ、なのか。あんなに可愛らしかったハナがここまで。
「結構傷ついているみたい」
「──やはり、母親のことか」
「うん。これじゃ悪魔を統括なんてできないし、最近はロドノスさんに任せてるの」
「ナトリがいるだろう」
「それがいないの」
「……確かに、アリスとイリスの元へ行く途中でいなくなったがてっきり帰ったのかと」
「どこに行ったのかな」
ロドノス──あいつか。任せておくには不安だ。だが、ハナを置いてまた争いごとに身を投じるのは……。
「ハナ」
「……」
ゆっくりと振り向いたハナ。目は虚ろ。軽く首をかしげる。
「私は貴女を守ったつもりだったが、それは思い違いだったのだな。──イリスなら今頃牢屋の中だろう。会いたいのなら、今すぐにでも」
「おかあさん……おかあさんが……」
「──大丈夫だ、ハナ。震えなくていい」
「あいたい、おかあさん、あいたい」
「──分かった」
傷ついたハナを元に戻すことはもう出来ないだろう。私が守らなければならない。──ずっと。




