第百二十二話 本当の想い
「ねえ、リサテア。どうすればこの状況を抑えられるの? 」
「人間にも悪魔にもできない。イリスの意志をねじ曲げないといけないからね」
「……でも」
「『鎖』はすごく危険なの。あなたが近寄れば死ぬ。だからね、ソフィアたちの帰りを待つしかないの」
「そんな」
私は外に行こうと思い、走り出す。途中で赤穂さんが止めてきたが、気にはしない。
私は何とかして、鎖のいる屋上にたどり着いた。彼女は柵の向こう側で、今にも落ちそうだった。
「……鎖、もう終わりにしよう? 」
「──ねえ、あなたは人が何のために生きるか分かる? 」
「……」
振り返った鎖の顔は、穏やかな少女の顔をしていた。もう、あの鎖じゃない。
「人が……生きる目的? 」
「私はね、そんなものなんてないと思うの。生きていても、死ぬのを待つだけなんだって。どんなに願いを持っても、叶うのはいくつかだけ。死ぬまでに全ては叶いはしないの。だからね、全て叶って幸せな今こそ、私は死ぬの」
「そ、そんなのおかしい! 」
私は飛び降りる気の鎖を止めるために言葉を探す。敵なのに、止めるなんておかしいよね……。
「叶うかどうかなんて、その人次第だし……人はね、物語を紡いでいるの。それぞれの人生という自分だけのオリジナルの物語を……だ、だからっ、その、鎖も物語を紡いでよ、最後まで……」
「私は、罪で黒く汚れてしまっているのよ。そんな黒い物語なんて、誰も望まないでしょう? だから、ここで終わらせるわ」
鎖は背中から飛び降りた。とても、笑顔だった。
そして──紅く染まっていた空はいつの間にか晴れていた。




