第百二十一話 暴走
爆発を何とか避けたものの、出血がとてもヒドいことになっている。後ろの二人にも危害が及んでいる。
「アリス」
その時、シルディが動いた。やっぱり、そうだった。
シルディはリィデの娘だ。リィデがもしそうなら、演じることだって容易いはずだ。
アリスは近づいてきたシルディをぽかんと見つめるだけで動けなかった。──アリスはそのまま、眠らされた。
「どういうことなの!? 」
「イリス、知ってるか。あの古代神、かなり強くてな、ちょっとやそっとの悪意に触れても打ち勝てるんだ。鎖も神の娘だが、所詮は善良な戦神の娘だ。たかが知れている」
「そ、んな──」
しかし、イリスは笑っている。言っていることと、表情が真逆だ。
「……お母様みたいな人を幸せにするまでやめない。やめないわよ」
「……ほう。イリス、君の母親は」
「あなたには分からないわよ」
鋭い眼光のイリス。髪がうねり始めている。
「まさか、イリス、『鎖』の悪意を飲み込んだの!? 」
「イリスはただの悪魔だ。しかも、聞いたところ憎悪の固まりのようだ」
「受け入れたら暴走しかしないよ。私は拒否したけど」
「っ──。サザンカ、アケボノ。アリスを連れて帰れ」
「ええ!? 」
「塵になりたいのか? 」
「──分かった」
「さて、シルディ。その鎌であの髪をどうにかしよう」
「あれ、鎖の髪? 」
「本人のをコピーしているから少しは劣るだろうが、危ないぞ」
イリスは鎖と同じ髪の毛を扱い、攻撃してくる。鎖は捕らえるしかしなかったが、彼女はこれを武器にしている。劣っているとはいえ厳しい。
避けるのが精一杯で、近づけない。これは、もう──。
「きゃあっ! 」
「シルディ!? 」
シルディが『鎖』に腹を抉られ、倒れる。
私も覚悟を決めた。負けだ。抗ってもダメだった、無駄だった。──もう、世界なんて。
「少しは、楽しめたよ……さよなら、ハナ」
かつて忠誠を誓った主とは二度と会えぬだろう。
私の喉に『鎖』が刺さり、血があふれ出す。──そして、目を閉じた。




