第百二十話 恐怖の開幕
アリスはやってきた奴らに容赦なく、弾丸をぶっ放す。心なしか、楽しそう。
「イリス! あなたの考えは正しくない!」
「バカバカしいわ、どこが間違っているの? 」
「他人の不幸を願うところよ! 」
私は何も出来ずに眺めていた。使えないから出てくるな、と言われた。でも──。
「さあ、死になさい! 」
弾丸の音に耳を塞ぐ。怖い。怖くてたまらない。こんなに震えるみじめな私。出て行ったところで無駄だろう。
シルディもその内帰ってくるらしい。でも、私が愛した娘の姿ではない。殺人鬼の殻を被った別の誰かだ。
「あなたは戦わないのね」
「……」
「それで構わないのよ。戦おうとしたからこそ、こうなったのだから」
「あの人たちの味方であるあなたが、敵である私に何のご用でしょうか」
「別に。気まぐれで動いているだけ。世界のバランスがおかしくなりそうだったら、こちらでどうにかするけれど」
「ありがとうございます」
「ふふっ」
彼女──時の管理者は笑う。気まぐれな彼女がこんなところに来るのはまあ、大抵想像していたが。
戦いは緊迫な雰囲気だった。ソフィアの傷がひどく、こちらも辛い気分になる。
「この戦い、終わったとしても本当の戦いがあるから。それまではなるべくうごかないで」
「本当の戦い? 」
「今まで目を背けてきた、悪魔たちの問題。それが何なのかもう分かるかしら」
「さあ、分かりません」
「そう。まあいいわ」
意味が分からない。本当の戦い? 私はこれが終わったら辺境の森でシルディとひっそり暮らす気だ。だから、これが本当の戦いなのでは?
────
私はボロボロになりがらも、応戦をする。ハナを守るために、と身につけてきたことが活かされていく。
「あら、シルディ」
「!? 」
やってきたシルディはいつもの可愛らしいシルディではなかった。美しいピンクの髪を血まみれにし、手には血まみれの鎌。返り血を浴びている。
殺人鬼だ──と判断した瞬間、鎌が前を掠める。危ない。
「……お願い、避けて」
と、小さな声が聞こえた。シルディ、まさか──!?
私は避けながらも、イリスらに攻撃をする。アリスはこちらを睨んでくる。あの弾丸を避けられるなんて思わなかったのだろう。
「──」
イリスが小さく囁いた後、爆発が起きた。




