第百十八話 紅い空への想い
街は悲惨なことになっていた。あちらこちらで炎があがり、あちこちにパニックになって逃げようとした人々の死体が転がっていた。
住民は国の機関のサポートを受けながら、避難をしている。被害が出てしまうなんて……。
私は頭を振り、戦闘に集中しようと試みる。
「ソフィア、作戦どうするの」
「……そうだな。相手の数が正確に分からなければこちらも動きにくい。もし、少なければ少し気を緩めてもいいのだが」
「多い可能性もありえる、か……」
イリスのことだ。鎖を仲間にし、ついでにシルディまで虜にしているのだから、まだまだいるのだろう。
「……にしても、紅くて綺麗だなあ」
「……そうだねえ」
「二人とも、これは世界を破滅したことのある怖いものだぞ」
「でもでもっ、ずうっと暗い空の下で育ったから憧れているの」
「私も」
「……そうか」
歩く足を止め、空を見上げる。ああ、本当に綺麗だ。
でも、複雑な想いもある。神様は元々普通に暮らしていた。だが、あの古代神たちはあろうことか、この破滅の空を生みだし、世界を滅ぼした。以来、神様は鳥籠の中にいる。ほとんどがか細い神経を持ち、いつ滅んでもおかしくない。
私にとっては、破滅の空。綺麗とは想いたくない。
「危ないっ! 」
突然曙がその辺に落ちている瓦礫を投げた。そこには、人がいた。まだたくさんいる。──でも、こいつらは。
「ただの人じゃなさそうだな……」
「えっ」
「操られている。全く困ったな」
いわゆる彼らにとっての理想の人間なのだろう。生気を感じない。しかも、子供ばかりとは。
「とりあえず、山茶花はどうなんだ。曙はできるようだが」
「何かあったときように武術を、一応……」
「それは難しいな……よし、後ろにいてくれ」
「うっ……」
私は着ていたローブの中から銃を取り出す。組み立て式の大きい本格的な銃だ。
「す、すごい」
「武器は一通り揃えてある。普段はナイフだが、接近するのは危険だからな」
それに、鎖の体力などの基本データから解き放たれ、あまり動けない。元の体の基本データはとても軟弱だ。
銃を構え、次々と撃つ。頭を撃っても復活したので、心臓を狙う。
「子供がこんなにいるところって……」
ふいに曙がぼやいた。確かに、小さい子供からやや大きい子供まで。集めるところと言えば。
「小学校、かな」
「小学校をおそったのか……」
何ともあり得ないやり方だ。汚いとも言える。数で言えばそれなりに多いだろう。
「困ったな……悪魔を巻き込むことは難しいし……」
「きりがない……どうするの? 」
私はポケットからブローチを取り出す。強く念じ、敵に向ける。敵は一斉に倒れる。
「気絶しているだけだから、急ごう」
「……すごいね、ソフィア」
「一応神だからな……」
褒めるほどではない。母親に教わった簡単な護身術みたいなものだ。スフィアもこれぐらいできる。
あちこちで崩壊が始まっていた。──過去を変える前、悪魔が共謀して起こした中河原市の崩壊みたいに。
「ふんふんふーんっと」
「……ナトリ」
「ソフィア、どうしたの? 」
「まずは爆弾を置け」
瓦礫の山の上には、爆弾大好きなナトリがいた。何をしているんだ? まさか──。
「便乗して壊せば、怒られないから。それに、ここには人はもう近寄らない」
「まあ、そうだろうな。呪われた地として語られるはずだ」
「にしても、変わった? 少し女の子っぽい声に」
「今はそんなこと言うな」
ナトリはにこにこ笑いながら、爆弾を投げ続けている。破壊し尽くす気か。
そんなナトリを見て驚く二人。まあ、そうか。
「ナトリさんですか……聞いたことはあります。事後処理をややこしくする、と」
「そんなに迷惑かな」
「曙の言うことは正しいと思います。事後処理は大概、スミレの仕事です」
「そっか……な、なんかごめんね。代わりに、協力してあげる! 」
「ありがとうございます」
さあ、敵はどこにいる?




