第百十四話 鎖とドルッセオ
危険だと既に赤穂が注意したおかげか、外には人影がない。ビル街のとあるビルの屋上にいる鎖をすぐに見つけれた。
「『破滅せよ 破滅せよ 破滅せよ』」
「……! 」
鎖は柵の向こう側にいた。このビルは12階建てだ。落ちれば間違いなく死ぬだろう。
鎖が呟いているのは、ドルッセオの仲間が書き遺した破滅の詩。全文を音読すれば、石の女のヒナギクの血を受け継ぐ者が弱いとされるこの幻想空間も生み出すことが出来る。──鎖は、ドルッセオの仲間ということだ。
「鎖、何を」
「──愚かだな、ソフィア、曙、山茶花」
「破滅の詩か。ドルッセオの仲間とは呆れたことをする」
「彼女は素晴らしい願いを遂げようとしているだけだから、私はお手伝いをする」
そして、叶ったら死ぬの──。少女の顔に戻り、鎖は確かに呟いた。しかし、それは一瞬のことだった。
「『石の女は 死ぬべき運命にある
我らを苦しめた罪だ 子孫はもっと苦しめ
もっと もっと もっと──』」
私は山茶花たちと共にビルの中に戻った。ビルの中では、逃げ遅れた数人が余波を受けて冷たくなっていた。
「この詩は私達にも余波は少しある。神の娘である私でも少しはある」
「……だから、放置したのね」
「山茶花、鎖を止めるためにはドルッセオ?をとめないと」
「──ドルッセオは石の女に滅ぼされた古代神の末裔だ。ドルッセオにしか読めない字で手紙を遺し、悪魔の世界に送った。成長したドルッセオはいろいろと考えただろうな。実行するのかどうかを」
「それで、ドルッセオって」
「ドルッセオと名乗っていないだろう。身分はどうだろうか……」
有利に行動するべく恐らく、上層部にいるだろう。しかし、上層部には数え切れないぐらい悪魔がいる。ハナが幼いころ、とても苦労した覚えがある。その時と比べ何人か辞めていたとしても、顔すら覚えていない上層部メンバーはどれほどいるのだろうか。
「上層部メンバーって何人? 」
「ドルッセオが潜り込んだであろう時代の頃は多分……ざっと100名程だろう」
「……それ、意味あるわけ? 」
「山茶花、不正とか防ぐためだから」
「それにしても多いような」
「当時一番恐れたのが、長の暗殺だ。それを防ぐための守りとも言える。100人もいれば余程自信のあるやつ以外、やってきはしないだろう」
「ふうん」
冷たくなった死体の頭を叩くと、明らかに別の音がした。もう遅かったか。
ドルッセオがこの市内にいるのならば、捜し出さなければ。手遅れになってしまう。
「ソフィア、赤穂に相談してみよう」
「……彼女なら、確かにこの市内のことは網羅しているが」
「早く、戻りましょ」
赤穂は落ち着いた顔で待っていた。凛子もリサテアもいる。
「ドルッセオをあぶりだそうと思っていたの。ドルッセオ、市内にはいないから」
「いないのか? 」
「ええ、そうね。私には感じ取れないわ。いたとしても──神だから」
「そうか……」
「ドルッセオとの戦いの前に少しお話をしましょう、偽善者」
時の管理者がやってきて、赤穂の紅茶の横取りをした。急に何を……。
「何の用かしら」
「稲美、あなたのことを言っているの。──人に恋をして、自分が悪だと分かっていながらなお善人であろうとしたあなたのことを」
「──見抜かれていたとはね。赤穂に頼んであまり多くの人には言うなってしていたのに」
「偽善者、あなたのためにどれだけの人が死ねばいいわけ? あなたに協力した赤穂も赤穂だけど」
「──今はやめて。赤穂について悪く言わないで」
「それじゃあ、この場で推理を聞かせて欲しいわ。とても、立派な推理話を」




