第百九話 宮島家と沢田家
「……違う、違う」
凛子はぶつぶつと何か言っている。
ここ、中河原市には管理人である沢田家が住んでいる。その人の屋敷に行けば大体のことが分かる。
「こんにちは。どうしたのかしら」
「赤穂、鎖を知らない? 」
「ええ、来てるわ。ついでにイリスとかアリスも、ね」
「──あの、宮島家は」
「まあ、あなたが稲美の孫娘かしら。可愛い子ね」
「……はい、そうみたいです」
宮島家。凛子は何を言っているのだろうか。意味が分からない。
「あのっ、宮島家を知りませんか? 」
「──今、ここには沢田家がいるのよ。それで察しなさいよ」
沢田赤穂は鋭い瞳で凛子を睨んだ。宮島家とはよく分からないが、赤穂にとっては気に食わないらしい。
「それにしても、シスター大集合じゃないの? 四奈含め全員、中河原市にいるわ」
「え……」
「スミレ、ソフィア、菊、蓮華。あなた達は早くモルトレアに行きなさい。凛子ちゃんとリサテアには話があるから」
4人がいなくなると、時の管理者が現れた。──珍しく、素顔で来ている。
「時の管理者に頼んで、宮島家の駒を潰してもらったの」
「赤穂、それは違反じゃないの」
「あなた達も同じでしょう? 過去を変えまくって……まあ、おかげで宮島家は『生』への固執がなくなったけれど」
「……感謝しているのなら私じゃなくてミーナに言ってちょうだい」
「凛子ちゃん、あなたには話しておくわね。過去を変える前、宮島家は沢田家当主である私を1年前に殺したのよ。生きるために、ね」
「……え」
赤穂は紅茶をゆっくりと飲む。真面目な話をするときはいつもストレートティーだ。
「宮島家は本来なら悪魔としてハナに協力して、いつも側にいるべきだった。実際、どこぞやの貴族のように近くにいたらしいわね。でも、私のようにのんびりと地上にいる悪魔は長生きと聞いて彼女たちは行方不明となった」
「宮島家って短命なんですか? 」
「自分の体からクローンを生み出す馬鹿よ。長く生きれないわ。カナなんて、そうね……ハイデベル、どうだったかしら」
「あの子はいつ死んでもおかしくないぐらいだったわ。屋敷の警護も、家事も、面倒事は全てクローンに押しつけていたのだから」
私は宮島家の記憶がなくなっているので、改めて聞くとバカだと思った。──お金はどうしたのだろうか。
「私はある日、ケンカをしたの。沢田赤穂について聞かれたけど適当に答えた私も悪いんだけれど、クローンを消せ、そうしたら生きられるぞ、って言ったらあっちは理解しなかった。それならば沢田赤穂を消す、そうして私は中河原市に降りたって、耐えれなくなったら中河原市の人間を食べるとか早口で言ってきたわけよ……」
「……中河原市の人は無事でしたけど」
「中河原市の人は多分、寿命を削られていたわ。あなたは知らなくても、宮島家が私を殺して生き続ければ──多分、中河原市はいつか滅んでいたはず」
「それで、赤穂。本題に入りたいのだけど、何を変えたのが良かったの? 」
「あなた達の改変のおかげで──まあ、そうね。殺人事件をひとつ消したのが直接関与しているわ」
「殺人事件が起こり、悪魔たちの間で話題となった。カナは神経質で、仲間が起こしたのではと疑心暗鬼となり、殺されてしまう──と思いこむ一種の精神病を患ったと思うの」
「じゃあ、消したおかげで」
「そうよ。生きなくてもよいと感じたわけ。おかげで私は生きていられるのだから」
いつの間にか、ミルクティーを飲んでいる赤穂。ま、まずい。
「ねえ、凛子ちゃん。あなたには死ぬ覚悟とかある? 」
「え、いきなり何ですか」
「ふふっ、シルディを救いなさい! ほら、早く! 」
危険モードの赤穂。ああ、どうしよう。




