第百三話 キオク
私は散歩することにした。何か思い出せるかもしれないからだ。
「あっ、」
湖のほとりにはナンパ神がいた。(名前は忘れた)どうやら落ち込んでいる。
そこに、私がここに戻る前お世話になった女性が現れた。シスタースミレの様に湖から。
「すごい変わった? 」
「当たり前だ、男装だからな」
「へえ」
「ところでハイデベルはどうした」
「この役立たず死ねといつものようにどこで覚えてきたのかフランス語で言ってきた、それ以来見ていない」
「時の管理者もフランス語を使うから間違いないのか……」
「時の管理者? ハイデベル、名前変えたの? 」
「ん、まあな。楽園の管理者に対抗するためだろうな」
「ふぇー」
「ところでお前は何してる」
「ユーリの記憶喪失について落ち込んでいたんだ。せっかく直った関係がまた壊れちゃったよ」
「それはよかったな」
「ひどいよ! 」
凄く楽しげで、顔見知りのようだった。彼女もまた、ここと関わりがあるのだろうか。
知りたい。私に関わることなら、とことん。
「ナンパ神」
「ちょ、ひどっ」
「さっきの女性とは知り合い? 」
「……まあね。──さっきの女性、ソフィアはシーナと僕の娘なんだ。彼女が知ったら怒られると思うから黙っておいてくれよ」
「そう、なんだ。あの、私とソフィアってどういう仲だったの? 」
ナンパ神は顔をふせ、口を濁らせた。何だか、心がチクチクする。どうしてなのだろうか。
「──ソフィアは戦争の後はほとんどここには戻ってこなかった、自分の時が止まっていることを改めて知るのが嫌でたまらなかったから。ここではほとんど関わりはないはずだ」
「……そう」
何だろう、このモヤモヤ。ソフィアと話がしたい、ソフィアとの間にある何かをどうにかしたい。
「会いたい」
「……無理だなあ、ほら、聞いてみろ。向こうは大変みたいだ」
湖から聞こえてくるのは物騒な音。誰か戦っているんだな。
「──chainに触れたのだからな」
その瞬間、私の中で何かが弾けた。
私は夜まで倒れていたらしく、ナンパ神が毛布をくれた。しかし本人はいない。このやろう。
そこに、スミレが現れた。
「こんばんは。その──悪魔たちの中で二番目に偉いのがその、ハイデベル」
「だから聞いたことあるの、私」
「……そう、だったんだ。大丈夫? 」
「大丈夫……」
chainと聞いて以来、頭が痛い。なぜなのだろうか。
「……chain」
「え? 」
「私、ソフィアと話してみたいの」
「ソフィアと? 無理無理。彼女、楽園にいるから」
「──」
私はもう一度この世界を出て確かめたい。私の過去を。
「ねえ、どうしたら出られるかな」
「──ソフィアのように一流の神になるしかないの。それ以外は有り得ない」
「……」
私はスミレと別れ、神殿の自分のベッドに潜り込んだ。
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夢を見た。
ソフィアと思わしき女性が私と、もう一人の女性と戦っている。
──これは私の過去?
──彼女の名前は
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