第百二話 時の双神
「ユーリのこと? 」
私はリサテアの横にある椅子に座り、話を聞くことにした。
「ハイデベルという女性、知ってるわよね? 」
「ああ。ハナよりも偉い女性だ」
「時の神の片割れである時の管理者。私達でさえ正体は見抜けないのだけれど、名前がハイデベルなの」
「……」
「……は? 」
理解が出来ず、目をパチクリとする。
「時の神、確か双神で片割れは行方不明だとか」
「行方不明ではないの、時の管理者として生きてる」
「……時の管理者がハイデベル様、ということ? 確かにハイデベル様は潜入すると言いつつきえたけど」
「ユーリに聞いてハイデベル様という存在を知ったわ。彼女は私達から逃れていたのね。──神だから」
「……兄に呆れて逃げたの? 」
「違うわ。ハイデベルはね、寂しかったの」
シスタースミレは遠くを眺める。時の双神、ハイデベルとハイガベル。ハイガベルは役立たず過ぎる神として有名。妹のハイデベルの能力はハイガベルの数十倍とも言われている。
「ここにユーリについて書いて。ユーリに読んでもらうから」
「……うん」
リサテアが書き進める。私は彼女について知らない。ほんの少し協力しただけだ。
私は暇なので、治療中のリサテアの見学に訪れた。
「……用ですか」
「シスタースミレみたいに気楽にしてくれると助かる」
「……治療中、邪魔しないで」
包帯が少しずつとれていく。腕の包帯全てがとれたときに、シスターリンは手を止めた。
「負荷が重くて、これぐらいしかできないの」
「……そうか。シスターリン、君はどれくらい神について知っている」
「シスタースミレからいくつか規制はかけられているから全てではないの」
「ふむ……」
私は時の双神の片割れ、ハイガベルに会おうと考えた。私も神の娘のため、湖は通れる。
「ハイガベル」
「うわあっ」
湖からでると、しょんぼりとしたハイガベルに会った。また怒られたのか。
「すごい変わった? 」
「当たり前だ、男装だからな」
「へえ」
「ところでハイデベルはどうした」
「この役立たず死ねといつものようにどこで覚えてきたのかフランス語で言ってきた、それ以来見ていない」
「時の管理者もフランス語を使うから間違いないのか……」
「時の管理者? ハイデベル、名前変えたの? 」
「ん、まあな。楽園の管理者に対抗するためだろうな」
「ふぇー」
「ところでお前は何してる」
「ユーリの記憶喪失について落ち込んでいたんだ。せっかく直った関係がまた壊れちゃったよ」
「それはよかったな」
「ひどいよ! 」
私は湖に潜り、モーキュネストに戻った。
「ソフィア、逃げて! 」
そこでは、無感情な彼女らが感情を露わにして、必死に戦っていた。意味も分からないので、とりあえず剣を持ち逃げる。いや、ここは助けにはいるべきだろうか。
私は敵の前に立った。──ああ、シルディだ。“あれ”を作動させたのか。
「何だ、触ったのか」
「……大したことなかった、お母さんの言っていたことは嘘だった、何で、あんなもの、あんなもの」
「……ダメだな、これは」
楽園の鍵でもこじ開けたのだろうか。もしくは楽園の管理者による導きを?
「シネ」
「危ない! 」
鎌が振り下ろされようとしていた。危ない、危ない。私はきちんと避けた。
「所詮、“あれ”の力などたかがしれている。ふん、ここは一旦撤退してもらおうか」
「……」
私は渾身の力で剣を振り下ろし、鎌を折った。狼狽えるシルディの後ろに回り込み、首にチョップをいれ眠らせた。
「……凄い」
「私はハナを守ってきました。ハナが幼い頃から、ずっと」
「とりあえず運びましょう」
「シルディはこの外に放り出すべきだ。“あれ”──chainに触れたのだからな」
「えっ!? 」
「まあそういうことだ。私は楽園に帰る。リサテアは任せた」
急いで楽園に戻ると、扉がなかった。扉ごと吹っ飛ばされていた。イリス、ではない誰かなのか?
「これは大変だ……」
私は大急ぎで扉を修復するべく、力を使う。故郷に行ったので私の力は万全だ。
「イリス、一体どうしたんだ……」
イリスはもう狂ってるとしかいいようがなかった。




