第百話 カミサマ
今日は試しにと私の母親が来ていた。すごい美人。
「眠り姫から治ったのに、全て抜き取られていたって抜き取った奴、本当に恐ろしいわね」
「封じていた記憶が開きかけていたのでは? 」
「有り得ないわー自分から封じたのよーまあ未熟だからまさかとは思うけれどねえ」
「本当にまさかですね」
引き取りたいという母親の言葉もあり、私は神殿に行った。
「どうかしら」
「……」
そこに少し太めの男が走ってきた。こちらに向かってきてる。避けなくちゃ。
「うわああ、何で避けるんだい、ユーリ」
「記憶喪失なのをお忘れかしら、豊穣の神」
「ああっ」
「ほら、そこをどきなさい」
「……アッ、ハイ」
豊穣の神、ということは私の父親? 私とどこが似ているのか分からない。
「やあやあ、眠り姫チャン」
「あらー、ナンパ神」
「違う! 時の神だっ! 」
「でも妹に任せきりじゃない」
「むむっ……」
「──ユーリ、こいつには関わっちゃダメよ。ろくなことにならないから」
私はとりあえずうなずいた。時の神はしょんぼりとしていた。
「ごめんなさいね、ろくな者がいなくて。一応、教育はしているのだけれど、時の神の片割れであるハイデベルとか出て行っちゃって……まともにはならなかったのよ」
「ハイデベル……」
「あら? 覚えているのかしら」
なぜか、脳裏に黒色の髪の人が出てきた。これは、ハイデベル? 私の記憶の中の?
「そのハイデベルって……髪は、黒色? 目は紫? 」
「配色は逆よ。兄と違って人々を駒として扱える素晴らしい神だったのよ。時も立派に守っていたし。今は少し乱れているからもう……」
「私、そんな人に会ったことある気がする」
「……はあ。記憶喪失って本当に不便よね」
「シスタースミレに頼む。私の記憶のこと」
お母さんは優しく、私の頭を撫でた。そうしなさいと小さく囁いた。
夜。シスタースミレに尋ねた。
「……あなたの元々のお仲間と話ならしました。なので記憶については明日尋ねます」
「ありがとうございます」
ハイデベルという女性。私はとても聞き覚えがあった。それさえ思い出せば……。
「あら、ユーリ。お帰りなさい」
「……」
「まあ、聞いたとおりになっているのね。残念だわ。私はシーナ。守護神の端くれなの」
「……シーナ? 」
「思い出せなくてもいいわよ、明日にはきっと分かるわ」
シーナは消えてしまった。何者なのだろうか。私の脳裏にはもう生きていないはずと浮かんだ。知り合い?
私はこのまま記憶喪失なのだろうか。




