第十話 暖かな時間
帆乃水の家はいつも暖かく、どちらかと言えば小学生の頃は帆乃水の家が自分の家だった。笑いが絶えない家。そんな家に私もみっちゃんも憧れていた。
「帰ったで~」
「おお、お帰り。凛ちゃんも久々やな」
「うん。えと、こっちがシルディ。新しくきた友達」
「初めまして」
「そないにかしこまらていらんや。気楽にしてや」
「あ、はい」
帆乃水のお父さんは子供に敬語を使われるのが嫌いだとかで(おそらく関西人だから)タメ口で話すことを必ず許可してくれる。シルディも戸惑いながらタメ口にしようとしてる。
「あらあら、久しぶりどすなあ」
「おかん、ただいま」
「お帰り。里から生おたべ(生八つ橋)が送られてきたから一緒に食べへん? 」
「生八つ橋、シルディは外国人やし知らんしゃろ」
「うん、食べたい」
目を輝かせるシルディ。リビングに行くと、テレビがついていた。中河原市崩壊の生中継映像だった。
「朝からずっと中河原市崩壊んニュースなんよ」
「せっかく仕事が休みやのに、気分が暗くなってしまっておーじょーする(困る)わい」
「生八つ橋おいしい」
ニュースでは被害者の名前が続々とあがっていた。その中には中河原市都市化を押し進めた市長夫妻の名前も──。
中河原市都市化はあと少しで完全に出来上がるところだったらしい。なのに──。
「二人は先に二階のうちの部屋に行っておってええよ」
「あ、うん、分かった」
二階の帆乃水の部屋には意外にも昔の趣味が残っていた。ジクソーパズル、まだしているんだ。
私達は適当にクッションに座り、悪魔について話すことにした。
「中河原市崩壊は知り合いの悪魔がしたの? 」
「あんなの無茶苦茶。宮島家以外の悪魔だろうけど、まだ見つけられないの。最終手段でお母さんを呼ぶこともできるけどねえ」
「怪しい人は? 」
「椎葉裕美、かな。彼女挙動不審でいかにも、って感じ」
「あー」
その時、帆乃水がジュースをもって現れた。話は中断しなくては。
「お昼は蕎麦やで」
「わあ、食べたことないんだよね」
「楽しみにしててな」
「うん! 」
帆乃水は私達の暗い気持ちを晴れやかにしてくれた。帆乃水、ありがとう。
お昼のお蕎麦は相変わらず美味しく、とても懐かしい味がした。
そんなときだった──委員長の両親の死が伝えられたのは。




